ボーイズラブの小説やマンガの感想です.★3つが「面白い」であとはプラスマイナスアルファかな.お気軽にどうぞ.

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「ボーイズラブ」に代わる、何かいいカテゴライズはないものでしょうか。




【こんな話】
暴力団滝川組に養子として引き取られた初乃 (はつの) は、義父でもある組長の愛人として、辛い毎日を送っていた。
誰ひとり周りの人間に心を開くことのなかった初乃は、ある日、庭を散策中に 庭師の弟子・将大 (まさひろ) と出会う。
ふたりは惹かれあうが、初乃には将大と話をする自由さえなくて…

【ひとこと】
初乃には、心休まるひとときというものがないのです。
夜は義父の慰みものとなり、学校では滝川の名のせいで遠巻きにされ、舎弟や使用人ともろくに会話のない毎日。

そんな初乃に、運命を変える出会いが。
庭師の弟子として出入りしていた、花村将大です。
同年代の子と気さくに話をするなんて、初乃にとっては初めてのことで、初乃が将大に惹かれるのは当然だったと思います。
でも、将大は?

「茶髪にピアス」 という彼の外見で判断するわけではないけれど、最初は "お、キレイじゃん" くらいの気持ちだったのではないでしょうか。初乃を映画に誘ったのも、それほど熱い恋心ではなかったような気がするのです。

でも、その映画があだとなり、初乃はひどい仕置きを受け、将大にもその様子が晒されることになりました。
これは、初乃にとっては死にたくなるくらいの出来事だったと思いますが、このとき初めて、将大の気持ちがきちんとした 「愛」 に変わったのでは、と思いました。

                   ■□■

その後、将大は滝川の家を出されてしまいます。
"初乃のためにできることを考えるから 死ぬな" 
という将大の言葉だけが、初乃の支え。
しかし、義父が他界し、新たに天下をとった義兄・悦司は、初乃を憎々しく弄ぶようになります。

義父は、なんの含みも裏もない、ただの変人だったでしょう。
でも、悦司はそうではないから、痛々しいんです。無理しているというか、ヤケになってるというか。
初乃に酷いことをしながらも、どこか初乃を怖がっているような、そんな雰囲気でした。

そして、将大との再会。
まさか、暴力団員になって戻ってくるとは思いませんでしたね。
あとから思えば、こんなふうに悦司の前に姿を現さないほうがよかったに違いないのですが、ピリピリとした雰囲気の中で、ふたりの心が再び通い合うシーンに、あぁ 途中で (読むのを) やめないでよかったとつくづく思いました。

しかし! 運命はふたりに過酷な試練を与えるのです。
私、この本をかれこれ10日くらいいじっていました、一気に読めなくて。
読む順番も、もうメチャクチャで、あ こりゃやばいな!と思ったら 10ページほど先を読んで、覚悟を決めてから、また戻ったり。
でも、なんでこんな思いまでして読まなくちゃならないんだと思いつつも、結局は引き込まれてしまいました。
水原さんの本は初めてですが、恐い方だなぁというのが本音。

(このあと、結末にふれていますのでご注意ください)

                   ■□■

最後は、悦司の死によって、すべてが終わります。
あまりのあっけなさに、最初は拍子抜けしました。
彼の手紙にも、同情する反面、何を今さら… という気持ちがおさえられませんでした。

でも考えてみれば、プライドの高い悦司が、生きているうちに初乃に謝罪などするはずなかっただろうから、これがお互いにとってよい結末だったんでしょうね。
それに、悦司は頭がよかったから、初乃が自分に憐憫の情を寄せていることにも気がついていたと思うんです。
だからこそ、生前は謝罪しなかったのかな、とも思います。悦司が優しい人間になってしまったら、初乃が家を出て行きにくくなってしまうのではないか… 悦司がそこまで考えていたような気がします。

そもそも、将大が一命をとりとめたことだって、初乃に話す必要はなかったんです。それ以前に、将大の消息を知ったときに、殺すこともできたはずです。でも、そうしなかった。

憔悴した初乃を、自分はどうしてやることもできなかったけれど、将大なら… とでも思ったんでしょうか。
徐々に精気を取り戻す初乃を、悦司がどんな気持ちで見ていたのか、だんだん言葉少なになっていく悦司が気の毒でなりませんでした。

初乃など小指ひとつで捩じ伏せられるのだと何度も思い知らせておきながら
その反面、彼はどれだけの時間を初乃のために費やしてきたのだろう


初乃が悦司から解放されたように、悦司もやっと初乃から解放されたのかもしれませんね。
(★★★☆☆)


将大は、記憶を取り戻すでしょうか。
たとえ 将大にとって、初乃との再会が "初対面" のままでも、これからの生活がふたりにとって幸せであるなら、それでいいと思うし、初乃もそんなふうに考えているんじゃないのかな。
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Comment

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こんにちは♪
ほんと、これって、BLという中にいれなくてもいいように、思います。
水原さんは、何故か好きで、今まで出てるのは全部読んでるのですが、
一番、気合、や思い入れ、があるように思いました、この作品。

>将大は、記憶を取り戻すでしょうか。
同じ様に、記憶を亡くした状態で終わった”ボーダー・ライン”の時は、記憶が戻って欲しいと思いましたけど。
今回は、戻らない方に、私も賛成、です~
その方が、初乃も、辛かった過去を忘れて、新たに始めれますしね、将大と。
水原さん。
今月また、新刊が出るんです。
内容をまだ全く知らないのですけど。

では、また、お邪魔します~
| URL | 2006/01/14/Sat 17:10[EDIT]
>凛さん
こんばんは、TBありがとうございました。
今回は、無事TBお返しすることができて安心しています。

凛さんのブログにもコメントしたところですが、作家さんの一生懸命な気持ち、熱意が読み手にも伝わってきて、大事に読まなければと思わされました。
(なのに耐えきれず、先を読んでしまった…)

>初乃も辛かった過去を忘れて
ね、そうですよね。
初乃は優しいから、悦司に対する罪悪感も年を経るごとに大きくなっていくと思うんです。
それならいっそ、初乃も将大も過去をサッパリ忘れて、新しい人生を歩んだほうが幸せですよね。

ハッピーエンド、と人に聞いていたので、最後の最後に記憶が戻るのかと思っていたけれど、戻らなくてよかったと嬉しかったくらいです。

>新刊
そうなんですか、楽しみに待ちたいと思います。

ありがとうございました。
リリカ | URL | 2006/01/14/Sat 20:31[EDIT]
忘れて・・
かぁ(笑)。
私は反対にあんまりそう思わないのですね~
かえって初乃の中では悦司との時間が年を経るごとに大きくなっていくように思います。
悦司が死んでしまったから余計に。
将大が記憶を失ってしまったから余計に。

多分初乃は悦司が死に、将大が記憶を失ったことで新しく始められると信じてると思うのですね。
でもそうは問屋が卸さなかった・・・・

となってくれっ!!!というのが悦司@滝川長男ラブなワタシの願望ですっ!!(笑)。

リリカさんの感想お待ちしておりました~♪
とっても参考になりましたよん。
なるほど~な気分♪

悦司びいきのワタシとしては(悦司が死ぬのは仕方がないにしても)、初乃には一生悦司を忘れて欲しくないな~(笑)。
おほほ | URL | 2006/01/14/Sat 21:27[EDIT]
微妙なニュアンスの違いですが
リリカさん、こんばんは。

初乃は過去を忘れないんじゃないかなあ…と思ってます。
将大のことを愛したことや、つらかった日々なんかも、ぜんぶ
忘れようともしないで、ただひっそり抱えて生きていくんじゃないでしょうか。
ただ、将大が忘れてくれたことには、ある意味ほっとしているんじゃないかと。
自分が辛い目にあっていたのを、つぶさに見届けられているわけで、
でもそういった、いわゆる汚れた過去を忘れてほしい、という気持ち以上に、
初乃を助けてくれようとして、将大がしてきた苦労や、酷い経験なんかを
将大には、忘れてほしかったんじゃないかなあ…と。
なんだかうまく言い表せてませんが(汗)、だいたいのところ汲み取って下さいm(__)m

悦司が将大を殺さなかったこと、助かったと初乃に告げたことは、
悦司にとって、これ以上は少しでも初乃に憎まれたくないという気持ちの
表れだったかもしれない、と思います。謝罪を手紙に書いたのだって、
自分が生きているうちに言ったとしても、許してもらえないかもしれないとか、
軽蔑されるかもしれない、とかいった臆病さがあったのかな、と。
なんだか憐れなひとでした。

長々とすみません。TBさせていただきました。
秋月 | URL | 2006/01/15/Sun 01:09[EDIT]
>おほほさん
おほほさん、こんばんは。

>悦司との時間が大きくなっていく
だからこそ!
山奥(なのか?)で、記憶をなくした将大と生活して、過去が少しでもぼやけていけばって思ったんですけど。
都会ではムリだけど、田舎ならできるような気がするの。

>そうは問屋が卸さなかった
(笑)
でも、悦司はあの世の人になってしまったのだから、初乃にそんな いつまでも呪縛されたような生活、可哀想だと思いません?
私も悦司は好きですよ、じゅうぶん養護派でしょ? 違うかなぁ。

意見は食い違うからこそ、面白いのです。
それだけこの作品が深いということで。

>直高変換について(笑)
このヘンについて、もっと深く考えたかったのですが、余裕がありませんでした。ヘヘ
ただ、直江はともかく、初乃に高耶さんを重ねることが、私には難しいような(笑)
おほほさんとは、ミラの話も一度してみたいと思っております。
(というか、おほほさんの話を一方的に聞かせていただくのがよろしいかと♪)
リリカ | URL | 2006/01/15/Sun 02:04[EDIT]
>秋月さん
秋月さん、こんばんは。
今夜(昨晩)は、秋月さんのところ、重くてコメントできませんでした。
また明日(今夜)お伺いしますね。

>初乃は過去を…
そうですね、忘れられないかもしれませんね。
というか、あんな体験、忘れるほうが無理だと思います。

でも、なんて言えばいいのかな、会ってお話できればいいんですけど(笑)
秋月さんがおっしゃってるのと同じ理由で、初乃は記憶をなくした将大といるほうが、ラクでいられると思うんです。
あの村で、将大と穏やかな生活を続けていくことで、いつか自分の辛い過去が真実なのか夢なのか、揺らいでくるときがくるんじゃないかって。

たとえが悪いかもしれませんが、犯罪を犯した人が服役中に、自分のしたことがホントかウソかわからなくなってしまうように。

>悦司
この人に関しては、みなさん思いがいろいろですね。
友人は、私の考えが甘いと言ってました (悦司は許されなくて結構派・笑)
秋月さんの思う悦司は、私が思うのよりも20パーセントくらい気弱バージョンかしら。

でも「憐れ」と思うのは同じで、初乃はもう少し優しくしてあげてもいいのに… と思ったものの、初乃の境遇を考えれば、あれが普通の反応かなとも思いなおしたり…
最後のほう、初乃の気持ちが揺らいでいることが、悦司は嬉しいけれどやっぱり怖かったのかなと思うと、やっぱり悦司はどこまでも不憫です。

でも、亡くなって幸せだったと思いますよ。
ありがとうございました。
リリカ | URL | 2006/01/15/Sun 02:05[EDIT]
わ~い♪
さっそくのレスありがとうございます。
しかし、この作品凄くないですか?
ある意味。何やらアッチコッチで論議を(いい意味です)巻き起こしている模様。
こんな「BL」作品、ここしばらくなかったような(笑)!

>意見が食い違うからこそ面白い

その通りですね!
あ、りりかさんは十分悦司擁護派ですよ~(涙)
単にワタシがSなの・・・・(自主規制)

私ももう一度読み返したりして(別の思惑もあり、苦笑)、新たな感想をアップする予定だったりして。ははは。
新たっていうより付けたしですね。

ところで
>直高変換(笑)

私もあのままの初乃ではとてもとても高耶さんには変換できませぬ。
あのキャラクターを、というよりは初乃の置かれた立場を高耶さんに変換できるってコトで~す♪
当然、私の高耶さん@初乃は強烈ですぞえ(笑)。
真っ向から直江@悦司に対抗いたします。
潮@将大がビビる位に・・・・
おほほ | URL | 2006/01/15/Sun 15:07[EDIT]
>師匠!
おほほさん、トラックバック復活ですね。
ア○ブロから、回答もらえたならよいのですけど。
お互い、翻弄されてますね、しょうもないことで!(苦笑)

新しい感想、ぜひとも暴走してください。
R15でもR18でも、着いていきますよ!

>真っ向から直江@悦司に対抗
あ、そんな初乃のほうが好きかもしれません。
私、ほとんどの本を、受けに思い入れしながら読むほうなんですが、初乃はなんだかハッキリしなくて、肩入れしにくかったんです。
おほほさんの思い浮かべる初乃なら、OKかもしれません。

ビビる潮。
これは容易に想像できます(笑)

感想アップ、楽しみにしてますね。
リリカ | URL | 2006/01/15/Sun 22:01[EDIT]
リリカさん、こんばんは。ご無沙汰しております。
なかなか読むきっかけがなかった作品を、ようやく読むことができました。
この作品はホント、水原さんらしいなぁ、という気がしました。
凄く好きな作家さんなのですが、とても恐い作家さんでもあります。

>義父は、なんの含みも裏もない、ただの変人だったでしょう。
>でも、悦司はそうではないから、痛々しいんです。

これ、すっごく頷きました!
そう、実はこの作品の悦司の意味はすごく大きいですよね。
実は悦司は将大よりもずっと、初乃にとって一対一の関係を密に過ごした人だと思うんです。
私は悦司の行動は理解できないと思うけれど、どうしても嫌いになれないキャラでした。とても、とても孤独な淋しい人だったと思うので。

あー、やっぱりこの作品だと語ってしまいます…。
長くなってきたのでこれで失礼します。TB頂いていきます!

さくら | URL | 2006/01/23/Mon 23:18[EDIT]
>さくらさん
お久しぶりです、こんばんは。
さくらさんは、水原さんの作品、よく知ってらっしゃるんですね。

悦司の行動は、悦司自身にもわからなかったんじゃないかしら。
夜、仕事を終えて、なんとなく寂しくて、部屋に初乃を呼ぶけれど、どういうわけかそこで嗜虐心が出てきちゃう… そんな感じかなぁと思って。

早死にしてしまって、かわいそうでしたね。
生きていたら、和解できて、悦司も初乃も心が軽くなったかもしれないのに、不憫です。

TBありがとうございました♪
リリカ | URL | 2006/01/24/Tue 01:54[EDIT]
この本のレビュー書かれたときに読ませていただいたときは、まだ未読だったので、自分が感想書くときにコメントさせてもらおうと思ってました。まだ自分のブログでは書いてませんが、今週末にでも、と考えています。
ずい分前に読まれてるので、今更コメントしてスミマセン。

この作品、ものすごく好きです。
悦司の存在意義が最初わからなかったし、彼の最後の手紙もは、これは必要だったのか、と思ったのですが、泣けてしようがなかったです。そして遅まきながら、執着愛を読み取ったのでした。

彼が初乃に抱いたどうしようもない感情は、初乃にとっても悦司にとっても苦痛だったに違いないけど、そうせずにはいられなかったのですね。
リリカさんの最後の感想「解放されたのかもしれない」がしみじみしました。

将大はすごく希望のある存在でした。ヤクザになった彼が登場したときは、驚きました。
ただ、ラストの彼の生存は、ややBL的展開かな、と思いました。JUNEだったら多分死んでると思う。
でも、冒頭の問いかけは同感です。
ごまくり | URL | 2006/03/16/Thu 00:41[EDIT]
ごまくりさんへ
こんにちは。
昔の記事を拾ってくださって、むしろ嬉しいです。
ありがとうございます。

悦司と初乃が、もう少し早くわかりあえれば、どんなによかったかなぁと思います。
初乃には将大がいたけれど、悦司には誰もいなかったんだなぁというのが、気の毒でしかたなかったです。
執着愛って、なくしてからその大きさとか深さに気がつくのかもしれませんね。

>JUNEだったら多分死んでる
あ、そうですね。
最後がとってつけた感じのように、私もちょこっと思いました。
でも、初乃が幸せそうにしてるので、満足です。

丁寧に書かれているのがわかる作品は、読む側も力が入りますよね。
一言一句、読みのがさないようにしようって。
リリカ | URL | 2006/03/17/Fri 11:51[EDIT]
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