ボーイズラブの小説やマンガの感想です.★3つが「面白い」であとはプラスマイナスアルファかな.お気軽にどうぞ.

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「バスローブ、カッコイイだろう?」
BLに、バスローブはつきものだけど、なかなかこうは言わない。


身代わりの恋人
火崎 勇 著
茜新社 (2006.1)


【こんな話】
よかったら俺の秘書じゃなくもっと別の…、そうだ、愛人にならないか?
派遣社員の赤羽東砂 (あずさ) は、新しい上司・岩波に、着任早々くどかれた。
最悪の事態に、憤慨 そして警戒する赤羽だったが、岩波は上司としてなら申し分のない男で、知らないうちに彼のペースに巻き込まれてしまう。
しかし、派遣期間も終わりに近づき、いざ自分の後任についての話を耳にすると、赤羽は寂しさを覚えるのだった。

【ひとこと】
安っぽい設定と思ってはいけません (笑)
私も最初は、少しそう思ったんですけど。

赤羽は、かなり自分に自信をもっています。
実際、仕事もできるんでしょう。
ただ、人付き合いは苦手なようで、それが派遣社員たる所以です。

でも、無能な上司の下で働きたくないのも、派閥に巻き込まれたくないのもよくわかりますが、ダメな上司に要領よく使われるのも 仕事のうちなのでは?
ちょっと鼻持ちならないヤツ… というのが、赤羽の第一印象でした。

そして、岩波。
この人は、うーん… 話が進んでくると、ちゃんと普通の人に見えてくるんですけど

「よかったら俺の秘書じゃなくもっと別の…、そうだ、愛人にならないか?」

これはどうしたっておかしいです (これに続くセリフが、もっと笑える)
それを平然と聞いている、第一秘書の高野も、もちろんおかしい。
まぁ、高野には別の思惑があったんですけどね。

ところで、このときの赤羽の

自分が知らない 『アイジン』 という役職がこの会社にあるのかとも思った

っていうのは、ボケ? それとも突っ込み?
こんなふうに3人のキャラが不可思議すぎて、安っぽい という先入観は、あっさりと消えてしまいました。

さて。
幸か不幸か、岩波は、このテの話によくありがちな エロ上司ではないのです。
それとなく、攻めてはきますが、赤羽がイヤがれば無理強いはしません。
赤羽も、完璧に仕事をこなす岩波のことを、嫌いになれないんですねぇ。
ずるずるとアリ地獄に落ちていくアリんこのように、どんどん岩波に惹かれていく赤羽。あっというまに
この人はそんなにおかしな人じゃないのかもしれない
なんて思うように。

しかしそんなある日、オフィスで居眠りをして少し寝ぼけていた岩波に、無理矢理キスされてしまいます。
ここ、おぉ 面白くなってきたぞ?! とは思ったんですが、そのまま最後までやっちゃうとは思いませんでしたよー (笑)
うーん、別にいいんだけど… というかこの展開でOKなんだけど… 岩波はこの状況で縛ったりしないんじゃないかと。
そこがひっかかりました。

そして、美少年・秋沙 (あいさ) の登場です。
赤羽と、顔もそっくりなら名前も似ていて。
自分はただの身代わりだったのか、と落ち込む赤羽の独白が淡々としていてとてもせつないです。

オチは、なんとなく予想ついてしまうかも。
ただ、もう出てこないと思っていた (笑) 第一秘書の高野が、乙女ちっくに絡んできたのは予想外でした。
好きよ、高野さん。

みんなで仲良し。
お子さまたちのオフィスラブ v  
(★★★+0.5)


永遠の少年 (推測) 高野さんの話が読みたいです。
スポンサーサイト

「宗教なら間に合ってます」
道を尋ねられただけでも逃げたくなってしまうくらい、物騒な世の中になってしまいました。
きっと、劇的な出会いも激減してるに違いありません、残念だ…


命令を待ってる
火崎 勇 著
ワンツーマガジン社 (2005.12)


【こんな話】
ある晩、勤め帰りの市来 (いちき) の前に、「何でも命令してくれ」 という男・大月が現れる。両親を亡くし、親戚に預けられて育った市来は 「平穏」 を愛し 「特別」 な状況を嫌うようになっていたが、自分を好きだと言ってくる大月を突き放すことはできなかった。

【ひとこと】
ふたりの行く末を見届けて、いま思うことは、なぜ大月はあんなできそこないのファンタジーまがいの登場のしかたをしたんでしょうか。
まさに、満を持しての再会だったんでしょう? 事前に、よく考えたんでしょうか。

「俺はお前の願いを叶えるためにやって来た」

って、片膝立てて。
私のような騙されやすい人間相手ならともかく、普通なら即110番されるか、最近は防犯ブザー鳴らされたりとか…

でも、市来の "事なかれ主義" に、救われました。
子どもの頃、事故で家族を失って以来、人とは違う 「特別」 な状態を嫌って生きてきた市来にとって、大月のような不穏分子 (笑) は無視するに限ると思ったんでしょう。

それでも、市来はやっぱり、心のどこかで誰か自分を受け入れてくれる人を求めていたんですね。
大月に自転車をもらったり、食事をしたり、話したりするたび、
「俺は "特別" は嫌いだけど、大月さんにとってこれは "特別" なことではないだろうから、別にいい」
などと、ほとんどヘリクツみたいな理由付けをしている市来は、まるで子どもです。

アイスを買ってきて、と初めて命令したあと、大月の部屋でひとり泣きそうになる市来が可愛くて好きです。

そして。
実は、大月は あの12年前の事故の関係者でした。
大月が自分の傍にいる ちゃんとした理由が欲しかった市来なのに、いざその理由がハッキリしたら、今度は不安になってしまいます。
理由が欲しいのは、市来自身の言い訳であって、本当は大月が 「好き」 って言ってくれるだけでよかったんですよね。

そんな市来を見て、いてもたってもいられなかった同僚の吉村くん。
深夜、市来の部屋の前で待ち伏せしていたのには、背筋が寒くなりました (笑)
その後の行動も、痛々しすぎ! カッコ悪すぎ!
それほどまでに市来のことが好きだった 熱い気持ちは嫌いではないけれど。

うまくオチがつけてあるなぁ、と思ったのは、大月があんな王子様のような現れかたをした原因が、実は市来にあったというところ。
12歳の市来は、両親のお葬式に来た18歳の大月に、すでに命令していたんですね。

「俺が大人になったら会いに来い」

このシーン、イラストで見たかったです。
きっとこのときも、大月は市来の前に片膝立てて座っていたような気がしませんか。
事故のとき、自分を助けてくれた 「大月の目」 が市来の記憶に残っていたように、大月にそんな命令を下したこともデジャヴになってたりしたらいいなぁ、と。

その命令が、というか、12歳の市来が忘れられなくて、アメリカに逃げてみたり ストーカーしてみたり 男を抱いてみたりしてしまった大月も可愛すぎますよね。
18歳の青年が、12歳の少年に恋する… ふふ
まぁ、今だから可愛いと思うわけで、そんなふうにジタバタしているところを想像するとそれなりに気持ち悪いのですが。

市来のいとこ、徹さんの言葉には泣きました。
でも、彼の話を最後まで聞いてみたら、彼は私が思うような人ではなくて。
それでもなんだか諦められなくて、もやもやしていたので、あとがきで隠れ設定を読んで救われました。
火崎さんは 「ごちゃごちゃするのでカット」 されたそうですが、これでは徹さんが気の毒です (笑)
(★★★★☆)


気がついてみれば、市来は男にモテまくりです。
小沢先輩もそうですよね?
人のビールに焼き鳥つっこんじゃう人…
って、こういうことする人を、最近ほかのマンガでも読んだような気がする。なんだっけ、気になるよ?。

古本屋さんで火崎本がセットになっていたので、どーんと購入。
古い作品が多いのですが、最近は復刊ブーム、私が買ったとたん復刊しそうでイヤな予感がしてます。


最後の純愛
火崎 勇著
徳間書店 (2005.9)
ISBN : 4199003649
価格 : \540


【こんな話】
フリーライターの巨摩は、サラリーマンの芝とルームシェアをしていた。穏やかな芝は、巨摩にとって理想の相手。
このまま心地よい共同生活を続けていきたい ─。
ところが、芝に想いを寄せる同僚が現れ、 「芝を好きじゃないなら同居を解消しろ」 と迫られてしまう!!
敢えて封印していた欲望を自覚した巨摩は、ある晩思わず芝をきつく抱いてしまい…!?
(カバー裏より)

【ひとこと】
↑あらすじの最後 "抱いてしまい" ってなってるけれど、実際はただの抱擁です。
どっちの 「抱く」 にとらえるかによって、ニュアンスが違ってきちゃいますよね。
これだとなんだか、巨摩が 節操ない攻め みたいでお気の毒。こんなに、純なのに…。

■ブラインド・ラブ
というわけで、どこから見ても、 男らしくて 心が広くて 細かいことなんて気にしない サバサバした男… に見える巨摩。
実は、とっても繊細な男でした。

巨摩は、過去に悲しい恋愛をしていたんですね。
だから、もう恋はしない!と決めた。
ルームメイトの芝にも、特別な感情を抱くことなく 2年間かけて よき「友人」 の関係を築いてきたつもりでいたのです。
(芝のほうは、友だちとは思ってなかっただろうけど)

でも、そんなある日、芝の同僚 小久保からいきなりのライバル宣言。
そして、芝から意味深な発言 (=事実上の告白) があり、巨摩はちょっとしたパニックに。
もう俺には恋をするエネルギーなんてないんだ! とおろおろ…
余計、無駄なエネルギー使ってると思うんだけど。
そのうち、妙な妄想夢まで見る始末 (余談ですが、夢の中の芝が妖しすぎ)

そんな巨摩はすごく情けないんだけれど、不思議とカッコ悪くないんですよねぇ、これが。むしろ、さまになってる。
ヘタレなのに、ヘタレぽくないんだな、この人。

悩んで悩んで悩んで、やっと 「俺はあいつと一緒にいたい」 と結論が出たところに、タイミングよく芝が帰宅。
で、思わずギュ?ッ って抱きしめちゃったのです。
…と、ここが件のあらすじの部分。

巨摩が、なぜ恋をしないか。それは、

友人ならば、失わなくて済む 失っても諦めがつくから

もう、大のオトナがこんなへりくつ。
失ったときの悲しみなんて、家族も友だちも恋人も同じなのに。
巨摩って、友だち少ないですよ、ゼッタイ。

そんな巨摩に、芝がじわりじわり迫ります。もう、理屈攻め。
かわいそうに巨摩は、逃げ腰、及び越し、おまけにメソメソしちゃったりも。
それでもやっぱり、カッコ悪くはないの。なんで?


■書き下ろし 「最後の純愛」
さて、続編。
ますます悩む巨摩のところに、今度はむかしの男が訪ねてきてしまいます。
巨摩、今度はイライラしっぱなしです。

この昔の男が、意外なことを言うんですよ。
「あの頃は、ずいぶん甘えさせてくれたからさ」 って。
もしかして、巨摩ってむかしは可愛かったの? いやだー、想像できません。

さて、芝のほうも知られざる一面が明らかに。
嫉妬深いです。熱いコーヒーの入ったポットだって、平気で投げつけちゃいます。
でも、そのヒステリックな面を知って、なぜか安心しました。
だって、今までの芝って、喋り方からして、学校の先生か牧師さんか、って感じで、面白くなかったんだもの。
巨摩も私と同じ気持ちで (ほんとか) 芝のこともっと好きになったんじゃないかな。

ふたりとも、カッコつけてたのが半分+自信なかったのが半分。
もう、お互い本性がバレたので、でろでろに甘くなっちゃいそうです。
(★★★☆☆)


柴犬、狛犬…?

ネコはどうも苦手です。心の中を見透かされてるような気がして。
この小説、ネコ好きな人なら共感できるのかしら。


運命の猫
火崎 勇著
徳間書店 (2004.4)
ISBN : 4199003037
価格 : \540


【こんな話】
ある晩、グラフィックデザイナーの梁瀬が酔っぱらって帰宅してみると、ドアの前にひとりの青年が立っていた。
「俺、猫だから拾って欲しくて」
飼い主を探していた… という青年に興味をもった梁瀬は、彼にクロと名付け、家に置いてやることにした。
つかず離れずの距離を保っていた梁瀬だったが、日が経つにつれ、クロのことが可愛くてたまらなくなり…

【ひとこと】
ふたりとも変わってる…
まず、この物騒なご時世、見知らぬ人間を部屋に入れたりするでしょうか。
ましてや、「俺、猫だから飼って」 って、そんなアタマがイカれたような人…

ここのやり取りが不思議でなりません。
梁瀬が酔っぱらっていたからなのか、グラフィックデザイナーならではの感性なのか、ズレまくった会話はスムーズに進み、トントン拍子で話が決まってしまいます。

名誉のために言うが ウリだったら尻を叩いて追い出しただろう (by 梁瀬)

なんで!? ウリじゃなくても、猫を騙ってる時点で追い出すでしょう、普通。
だいいち、売り目当ての青年がこんなところに来ませんよ。
しかも翌朝、素面に戻っていたにもかかわらず、青年に 「クロ」 と名を付ける梁瀬…。
ホントにわからない。

ネコって、こんな感じなんでしょうか。
かまわずにいればすり寄ってくるし、かといって、こちらから歩み寄ると逃げていってしまうし。
なーんかつまらないんです。話が、じゃなくて、ふたりの関係が。

梁瀬がだんだんとクロから目が離せなくなって、ついに手を出してしまうまでの過程に、愛とか なんかこう温かいものがまったく感じられないんですよ。

クロが、梁瀬のことを知り尽くしたうえで近づいているから、しかたないのかもしれませんね。

ところが、ある事件が勃発、素性を知られたくないクロは家を出てしまいます。
少し前に読んだ 『小説家は懺悔する (菱沢九月 著)』 にも、同居していた青年がいなくなって 残された小説家が身も心もボロボロになるシーンがあるのですが、梁瀬にも、もっと荒れてほしかったなぁ。
友達の柴崎にまかせっきりにしないで、日本全国クロを探し歩いてほしかったし、アツくなってほしかった。

結局。
そんな梁瀬の、気性は激しいくせに今ひとつ熱が足りないキャラが禍して、クロに不安を抱かせてしまったわけですが、平たく言ってしまえば

ちゃんと言葉で 「愛してる」 って 言ってほしかった (by クロ改め美春)

だけなのでした。
ここ、引っかかりませんか。
だって、クロは猫だったんですもん。
梁瀬だって、心惹かれながらも、本当に心を許していいのかという葛藤でいっぱいだったと思います。
それでも、ちゃんと 「好き」 って何回か言ってるんですよ。
なのに今さら 「愛してる」 って言ってくれなかったから… ってなじられても、梁瀬が気の毒でした。

そして。
やっと、猫としてではなく、ちゃんと恋人として、梁瀬のところに戻ってきたクロ。
だけど、呼び名はずっとクロなんでしょうね。

やっぱり変わってる… (笑)
(★★★☆☆)




恋人から 「オレ、実はカツラなんだ」 とか 「オレ、本当はシークレットブーツ履いてるんだ」 って打ち明けられたとします。
でも、そのときに腹立たしいのは、髪の毛が少ないことでも、背が低いことでもなくて、自分が騙されていたことですよね、きっと。
人間、一度好きになった人を、そんな簡単に嫌いにはなれないのです。
そんな (どんな) お話。


てのひらの涙
火崎 勇 著
プランタン出版 (2005.8)
ISBN : 4829622946
価格 : \580


【こんな話】
シナリオライターの成宮は、パーティ会場で都築という男性に出会い、ひょんなことから彼と 「下心つきのお友達」 として付き合うことになった。都築のもつ大人の雰囲気に、瞬く間に溺れていく成宮。
しかし、都築から、自分たちのことを口外しないように言われたり、ある部屋の扉を開けることを禁じられたりするうち、不安でたまらなくなり…。

【ひとこと】
主人公の成宮は26歳。
でも、恋愛レベルでいったら、中学生くらい。
"大人の男性" 都築にナンパされてホイホイ着いていっちゃって、迫られて、キスされてるのに、ぼけーっとしてる。

本人は、パニックに陥ったから動けないと思っていたみたいだけど、そんなふうには見えません。むしろ乾いたスポンジのように、キスだろうがなんだろうが、どんどん吸収して受け入れてしまっている雰囲気です。
そんな態度が誘っているように見えたのか、遊び慣れてると勘違いまでされてしまう成宮。明らかに初心者っぽいのにね、都築もちょっと見る目がありません。

ぎくしゃくとした出会いながら、ふたりのあいだに漂うほのかな色気がGood v

さて、すっかり骨抜きにされた成宮ですが、都築との関係に次第に暗雲が…。
仕事先の人間に都築の話題を出すな、と釘を刺されたり、マンションの鍵を渡されながらも、この部屋だけは絶対に開けるな、と言われたり。
せっかくカッコよかった都築なのに、これを聞いたら、なんか了見が狭くて子どもっぽいんだな、と少しがっかりでした。

それでも、純な成宮は、すっかり気落ちしてしまって。
好きと言ってほしくてたまらないのに、言ってもらったら今度はその言葉を信じることができない…
ご飯も食べられなくなって、すっかり痩せちゃうんです。
かわいそうではあるんだけど、もうちょっとしっかりしなさい!と叱咤激励したい気持ちのほうがやや大きかったかな。

(以下ネタバレ)
しかし!
都築は子どもっぽくて、当たり前だったのです。
だって、まだ大学生、20歳だったんだもん!

成宮に 「大人っぽい」 と言われて、本当のことが言えなくて、そのままズルズルときてしまったのでした。気持ちはわかるけど、やっぱりお子様です。
でもね、出会ったとき、成宮は都築に 「30歳前後に見える」 ようなこと言ってるんですよね。
30歳にも見えてしまう、大学生…(笑)
これを踏まえたうえで、この本の表紙イラストを見ると、都築がとんでもないエロオヤジに見えてくるから不思議です。

正体がバレてからの都築は、今どきの若者に早変わり。
やんちゃ年下攻め、かな?
最初のほうの都築は、いったいなんだったんでしょう。読み返すと、その 「似非ジェントルマン」 っぷりが痛々しいです。

一粒で 二度恥ずかしい 都築かな  by リリカ
(若い人には元ネタがわからないかも、というか、それ以前につまらない・笑)

(★★★☆☆)


終わりかたが乙女っぽくて、背中がむずむずしました。一歩間違えたら、成宮はキモい…
芸能界描写は少ないので、業界ものが苦手なかたもどうぞ。

硬派ヘタレ攻め。
タイトルも、話も、イラストも、ぜんぶ素敵でした。


風でなくても
火崎 勇 著
ドリームメーカー (2005.7)
ISBN : 4861170427
価格 : \893


【こんな話】
高校の後輩で元恋人の遊馬 (あすま) が、藤吾 (とうご) の会社の新しい部下としてやってきた。
5年ぶりの再会に変わらない自分の想いを自覚させられる藤吾。けれども藤吾を振った遊馬は再会しても頑なな態度を崩そうとしない。
そんなある日、高校の後輩から思わぬ遊馬の話を聞いて…。
(「遊馬」 は苗字。「藤吾」 はもちろん名前で野々宮藤吾。以下 野々宮)

【ひとこと】
いいお話でした。

野々宮と遊馬は、高校の陸上部の先輩と後輩。
野々宮が卒業するときに、遊馬に告白したのでした。

この告白が、とても好き。
爽やかで、すっごく気持ちがいいんです。

『俺もいい先輩だと思ってました』 なんて間の抜けた返事はするなよ。
返事は 『一回くらいなら』 か 『気持ち悪いんで辞退します』 のどっちかだ。


"一回くらいなら" というのは、野々宮が 「一度だけ抱き締めさせて欲しい」 と言ったからなんですが、さすが陸上部のキャプテン、カッコよすぎます (このときは、まだヘタレではない)
そして、これに対する遊馬の返事も、もうなんともいえません。
ここまで読んだだけで (たった27ページ) なんていい話なんだろう… とため息が出たくらい(笑)

しかしその後、ふたりは、遊馬の音信不通が原因で別れてしまいます。
でも、こんなふうに、付き合いはじめたふたりが、少し離ればなれになったくらいでダメになるはずがないのであって、遊馬には音信不通にならざるをえない事情があったのでした。
(以下ネタバレ)

「風みたいに走る遊馬が好きだ」

野々宮にこう言われて、遊馬は本当に嬉しかったんでしょうね。
でも、嬉しかったからこそ、事故で走れなくなったとき、この言葉が 「走れない遊馬は好きじゃない」 という意味に変換されてしまったのです。
そんなことあるわけないのに。

一方、野々宮。
赴任してきた遊馬に、必死に気を配る野々宮が滑稽で悲しいくらいでした。感情に流されないように、ひとつひとつ自分に言い聞かせながら、遊馬のために自分は何をしたらいいのかって、ずっと考えてる。
そんな野々宮が、昔を懐かしむお年寄りのように見えたのは私だけですか。
彼の視点で話が進んでいくせいか、この本まるまる 「回想録」 のような雰囲気でした。


書き下ろしの 「風をつかまえて」 は、その後のふたり。
野々宮のヘタレ全開です。

遊馬のためを思って、会う回数を減らそうとする野々宮と、
それを、嫌われたと勘違いする遊馬。
そして、野々宮が結婚するという噂が流れ、遊馬が野々宮のマンションにおしかけるシーンが…。

許さない…っ!

遊馬の予想外の激しさに、思わず涙が… 出なかったのは、きっと野々宮の慌てっぷりが可愛かったからでしょう。
たぶん、遊馬は 「2005 マイベスト受」 になると思います。
(★★★★+0.5)


この会社、カッコいい人ばっかりなんですよ。
外川もさることながら、私はイラストの福井に惚れました (p.151)
他の挿絵も (もちろん表紙も) とても素敵です。
イラスト : 朝南かつみ さん

登場人物の少ない、ちまちまっとしたお話です(笑) 当事者たちは大まじめでも、端から見てるとなんだか滑稽で…。


書きかけの私小説
火崎 勇
徳間書店 (2004.12)


【こんな話】
新人編集者の中澤貴(たかし)は、兄(至・たもつ)の幼なじみで作家の木辺克哉の担当を命じられた。木辺は、ここ2年ほど新作を発表していなかったが、貴はぜひ彼の小説が読みたかった。というのも、貴にとって木辺は、子どもの頃からずっと想い続けてきた憧れの人であったのだ。「幼なじみの弟」としてではなく、ひとりの編集者として、木辺と対等に向かい合える日がやっと訪れたのだ。

【ひとこと】
本のタイトルと設定を見れば、もうどんな結末かわかってしまうと思うので、もうネタバレしちゃいます。
主人公の貴は、木辺に想いを寄せつつ、内心、もしかしたら兄と木辺は恋人同士なのでは?と疑ってるんです。ここのところを、ちゃんと兄に確認しておけば、こんな面倒なことにはならなかったのにね。

一方、木辺のほうは、至(上記 兄)に包み隠さず相談済み。でも至だって、"お前の弟が好きだ" と告白されて、さらに弟への想いを綴った小説なんてのを見せられても、"じゃあよろしく頼む" というわけにもいきません。そこで、"合意の上でなければ許さない" と、男同士の恋にクギをさしておいたわけです。

だけど!そうやってクギをさしたんなら、もう放っておけばいいのに、過保護な至は、先回りして、貴と木辺を接触させないようにしたりするんですよね、もう大人げない!
社会人になった弟を、ここまで可愛がって構いまくる兄ってどうなんでしょう。おまけに、言ってることは結構トンチンカンなもんで、しまいにはイライラしてきました。

ちなみに、貴が木辺の家に初めて泊まったあくる朝、なんと至は寝床まで迎えに行っちゃうんですよ。で、まだ布団の中にいるふたりに、ブツブツ文句言ってる。これって、ひょっとしたら、過保護というより、自分がのけ者になるみたいでイヤだったのかもしれませんね。

書き下ろしで「二人の私小説」という、その後のお話も入っています。そちらは、当て馬のようで実は違う(笑)北岡という小説家が出てきます。この男が、もう人騒がせの困ったちゃんなんです。だけど、いちばんの困ったちゃんは至ですけどね、多分。

話は、貴視点。貴の心の声とともに進行します。怒ったり困ったりしてる貴が、面白いんです。
(★★★★☆)
Copyright © 小夜すがら 其ノ壱. all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。