ボーイズラブの小説やマンガの感想です.★3つが「面白い」であとはプラスマイナスアルファかな.お気軽にどうぞ.

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『小説家は懺悔する』 の続編。
前作は私の、ベスト1 in 2005 です。
(感想はこちら


小説家は束縛する
菱沢 九月 著
徳間書店 (2005.12)




【こんな話】
律 (りつ) が脩司の家で暮らすようになって10カ月。
脩司の身の回りの世話をし、ほとんどを家の中で過ごす毎日に、幸せを感じながらもどこか不安を覚える律だった。
そんなとき、律はあるレストランで、昔の男・土屋と再会した。
土屋はそのレストランのオーナー兼シェフで、律に一緒に働かないかと声をかけてくるのだった。

【ひとこと】
前作で、脩司が小難しいことを考えていたので、また面倒なことが起きなければいいけど… と思ったら、脩司は思ったより幸せそうでした。もちろん、律も。
でも、

「幸せ、なんだろうけど」

と律は悩んでいます。
食事の支度をして、洗濯をして、買い物に行って、脩司の 「相手」 をして、それで一日が終わってよいのだろうか。
まるで、専業主婦の悩みみたい… 暇だから、いろいろ考えるようになっちゃったんだと思います。
律が男ということもあるんでしょうね、食べさせてもらっているという状況は居心地が悪いだろうし、脩司と対等でありたいと思うのは、当たり前のことです。

そこで、調理人として働けないかと、求人募集を出しているレストランを訪ねてみると、その店はなんと、律がむかし関係をもったことのある男・土屋が経営していたのです。
前作に出てきた、あの 「夜逃げの妻子持ち」 ではなくて、それよりも前の男です。

この土屋、p.65 のイラスト (高久尚子さん) を見ただけでゾクっときますね。
そして彼の口調がまた…

「コーヒーを飲みなさい。冷めてしまう。ほんの少し砂糖を入れるように」
「明日からここに来なさい… おまえもそう思うね、律」


怖いです、この何もかもわかってるような口調がとっても怖い。
律は自分のことを "流されやすい" と言っているけれど、そうでなくても この土屋にじっと見つめられたら、誰だって吸い込まれてしまいそうです。

律も、何もこの店で働かなくたっていいと思うんだけど、土屋に何度も誘われるうちに、自分が必要とされている快感に目覚めちゃったんですね。
このあたりも、とても主婦っぽい。
人間って、ずっと家にいると、外の世界からの刺激や誘惑に、とても弱くなるんだと思います (なんか 実感こもってるな、私…)

そして、律は脩司に、働きたいこと そして土屋のことを打ち明けるのですが、

律  「いい店だったけど、知り合いがいたからやめとく」
脩司 「知り合いって昔の男かなんかか?」


間髪入れずに、こう突っ込んだ脩司に少しびっくり。
律と暮らすことで、脩司もすっかり落ち着いたと思っていたのに、昔のピリピリしていた脩司がまだ残っているんだなぁ と思って。
それに、律の前では、たいしたことないような態度だったのに、そのあと親友・匡史に探りを入れてるんですよね。

ここ、匡史と弟・克己の連携プレーが、なんだかなぁ… と思ったのは私だけ?

脩司→匡史 「土屋って奴のこと 知らないか?」
匡史→克己 「なんか知ってるか?」
克己→匡史 「神経質な外科医みたいな雰囲気のサド」

へぇ、克己ってば、ちゃんと正直に教えちゃうんだーっ! て、憎たらしいようなホッとしたような気持ちになりました。
まぁ、結局はこれがこの4人の 「絆」 なのかな。
友だちや家族を通り越した存在だから、これでいいんでしょう、きっと。

最後、脩司 頑張りましたね。土屋の店に行くなんて。
初対面がアレだし、このままじゃ、土屋に負けてるって思ったのかもしれません。
土屋の対応も、大人でよかったです、とりあえず。
(★★★★☆)


匡史と克己の出番が少ないのが残念でしたが、それはイコール、もう彼らの手を煩わせなくても、脩司と律ふたりでやっていけるということなんでしょう。

それよりなにより、克己の彼女・千衛子がアタマの弱い子に思えてしかたありません。
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逃亡といえば、私は極寒の地を思い浮かべます。
断崖絶壁で北風に吹かれながら 「あなた、私ももうすぐそちらに行きます」 みたいなね…(夫の敵を討って逃亡している設定)
暖かいところだと、すぐ見つかってしまいそうでしょ。


夏休みには遅すぎる
菱沢九月 著
徳間書店 (2005.10)
ISBN : 4199003681
価格 : \560


【こんな話】
大学の後輩・倉島に、突然会社から拉致されてしまったサラリーマンの覚 (さとる)。
行く先も告げずに会社を欠勤させられ、逃避行のように旅立つけれど、倉島は何も教えてくれない。
しかも夜になると 「先輩が好きだった俺はこういう俺じゃない?」 と縋るように求めてくる。
密かに倉島に想いを寄せていた覚は、心が見えないまま繰り返し抱かれてしまうが…!?

【ひとこと】
↑「先輩が好きだった俺は…」 のニュアンスが、ちょっとわかりにくいですか。実際には、

「がっかりしました? 先輩が好きだった俺はこういう俺じゃないって?」

と言ってます。
宿泊先の温泉で、倉島が覚に迫りながら言うセリフです。

想いを寄せていた後輩に、職場からそのまま拉致されて温泉に…
おぉ、これは! とわくわくしていたら、あまりに重い展開に驚きました。

「つきあってほしいところがある」
「追われている」

覚が倉島から聞かされたのは、これだけ。
最初こそ、旅行気分だったものの、しばらくして倉島の様子がおかしいことに気がつきます。
好きだった後輩に抱かれて、それが愛情とは違うような気もするのに、倉島のちょっとした言動に喜んだりホッとしたりしてしまう覚。
うまい言葉が見つからないんですが、覚があんまり必死で、読むのが辛かったです。

一方、倉島。
どっちが本当の倉島なんでしょう。
覚との寮生活で、気性の激しいところは一度も見せたことなかったんでしょうか。
すごく危険な匂いがします。
わざと冷たくしているのか、本当にキレているのか、紙一重なところが余計に怖かったです。

読んでいるこちらも、真相を知らされないまま、ふたりの不毛なやりとりを聞かされるわけで、少々焦れたというのが本音です。


(ネタバレ)
「俺、母親を愛してるんです。外国人でもないのに平気でこんなこと言えるぐらい」

この本で、いちばん印象に残ったのはこのセリフといってもいいくらい。
なんでだろう。家族を愛するって、当たり前で素晴らしいことなのに、このセリフを読んで あぁ 倉島って危ないかも… と思いました。
そうしたら、そこから先の倉島の言動すべてが胡散臭く見えるようになりました。

今回の倉島の逃避行。
原因は、母の死でした。
彼が、いままでの人生で、愛を捧げてきた唯一の女性。
倉島は、いわゆる愛人の子でした。
ひとりで苦労する母親を見て育ったことで、母親に深い愛情をもつようになったのだと言います。

その母が、病床に伏し、実の父と兄を名乗る人物が現れたのが、事の発端でした。

倉島の奇行を、子どもっぽい とか マザコン とか、下世話な言葉で表現することは簡単です。でも、「母親の死」 という現実が目の前にぶら下がっているせいか、そんなふうにしたり軽口を叩いたり茶化したりできません。

…って、そこまで暗い小説じゃないんです、ごめんなさい!
私が語るとどんどん荒んでいってしまいそうなので、このへんにしておきます。

あ、そうそう。
実の父・伊沢氏と、兄・正敬のキャラがいいですね。この小説を、どん底からすくい上げてくれてます。
とくに正敬。
彼の辞書には、「小さい=小さくて可愛いもの」 とあるそうで。
正敬と覚が、コーヒーを飲むシーンに、猛烈にときめきを感じる私でした…
(★★★☆☆)


『小説家は懺悔する』 の続編が出るそうです。
すっごく楽しみ!

ずっと積んでおいたのが、悔やまれます。もっと早く読めばよかった。


小説家は懺悔する
菱沢 九月 著
徳間書店 (2005.3)
ISBN : 4199003444
価格 : \540


【こんな話】
恋人に逃げられ行き場を失った律 (りつ・24歳) は、その傷も癒えぬまま、小説家 佐々原脩司 (29歳) の家で、住み込みのハウスキーパーをすることになった。別れた恋人についてズケズケと尋ねてきたり、小説のネタに抱いたりと 強引な佐々原に、はじめは反感を覚えた律だったが、次第に佐々原に惹かれていき…。

【こんな話】
律は、コックさんです。雇われ先のレストランの店長さん (男) と恋仲になり同居していたところを、逃げられてしまったのでした。
この店長さんが40歳というので、律は年の離れた人に守ってもらいたいタイプなのかな、と思ったのですが、そうでもありませんでした。店長さんには、奥さんも子どももいて、ウジウジと悩みながらの不倫だったようで、それを律がなだめたりすかしたりしながら、関係を保っていたんだと思います。

親友の克己 (とその兄 匡史) が、手のかかる佐々原 (以下 脩司) を紹介したのもそんな律をよく知ってのことだったんでしょう。

さて、あまり気乗りせず 佐々原宅に出向いた律ですが、悲しいかな、一目惚れしちゃうのです、脩司に。本人にその自覚はないみたいだけど、明らかにそうかな、と。
そして、脩司のほうも、律に "津々" とはいかないまでも、興味をもったようで。

先を読むとわかるのですが、脩司は人付き合いが嫌いだし下手だし、好きな相手ほど "素" で接するから、ぶっきらぼうで冷たくなってしまう人なんです。
最初からずいぶん失礼な態度をとっていた脩司だけれど、あれって律のこと、かなり気に入ってたってことなんだなぁって、あとからわかって嬉しかったです。

そして。律と脩司はカラダの関係をもつわけですが、律がどんどん脩司に溺れていくのに対し、脩司の気持ちはとてもわかりにくいです。本当に最初は小説のネタにするつもりだったのかどうかも、私にはよくわかりませんでした。
でも、律と脩司には、ふたりだからこそわかちあえるものがありました。
大切な人の死が、いつまでも心に影を落としている、という共通項。
簡単には、他人に本心を明かさない脩司が、律に心を許したのは、そのせいだったんでしょうか。
そう考えてしまうと、寂しかったりもしませんか。それがなかったら、どうなってたんだろうって、余計なことを考えてしまいました。

その後、脩司がベストセラー作家であるがゆえのスキャンダルが発生、律が傷ついて、少しのあいだ離ればなれになってしまうのですが、ここでの匡史&克己兄弟がとても好きでした。

匡史は脩司の親友、克己は律の親友、いえ、もう親友以上です。律は 「一生友達」 と表現しています。
ふたりとも、互いの親友のことを、できることなら恋愛対象として好きになりたかった!くらいに考えているんですよね。だから、心配半分・嫉妬半分で、すっごく寂しそうにしてるんですよ。
基本的に、匡史は脩司の味方、克己は律の味方だから、言葉のすみずみに恨み節が入ったりして、なんとも微笑ましいです。

クライマックスは、無鉄砲な脩司にピッタリの演出。
よくある展開に興醒めしないのは、

「いくら俺でも他人のメシの種 つぶしたりはしない
映画が当たろうがこけようがどうだっていいなんて、作ってる奴らの前じゃ可哀想で言えないだろう?」


っていう伏線が張られていたからだと思います。
そんなふうに言ってた脩司が、滅茶苦茶なことを言い出します。未読のかたは、お楽しみに。

最後に。
「死んだ人には勝てない」 という克己の言葉が、心に残りました。
脩司は律に、「生きてる人間の中で一番」 好きだと言うんです。つまり、亡くした恋人のことは忘れられないと。
私はこれ、ずいぶん悲しい愛の告白だなぁと思ったんですけど、裏を返せば、それだけ脩司がバカ正直で不器用ってことなんでしょうね。
そんな不器用なところを律がわかってあげられるのは、やっぱり「共通項」があるからなのかもしれません。
(★★★★+0.5)


旅行に持っていったBL本、両方とも挿絵が高久尚子さんでした。さらに、登場人物の名前が "律" で。すごい偶然。

どうしようもない子なのかもしれないけど、私には真似できないくらい優しいところもある少年たちなのです。


のらいぬ
菱沢 九月
大洋図書 (2004.10)
ISBN : 4813010369
価格 : \903



【こんな話】
高校生の岩浅(いわさ)には高津(こうづ)という幼なじみがいる。女に優しい女嫌いで、暴れだすと手がつけられなくて、岩浅以外の誰にも懐かない。飼い慣らすのは面倒臭いが、高津は岩浅に忠実を誓っている可愛い犬だ。幼い頃から一緒の時間を過ごし、いつの間にか身体を重ねるようになっていたふたりだが、愛だとか恋だとか、そんなことは考えたこともなかった…。
(カバー裏より抜粋)

【ひとこと】
岩浅と高津は、友だちというよりは、きょうだいといったほうが近いと思います。
ともに、暖かい家庭には恵まれていないのですが、岩浅はそれが吹っ切れているのに対し、高津は内に内にためてしまっています。だから、岩浅の悪行は、実にカラっとしているのだけど、高津はどこか陰湿で、破壊的です。
殴って蹴って相手が動けなくなっても、まだ骨を折ろうとする高津、そして、そんな彼を止めるでも、焚きつけるでもなく、かといって加勢するわけでもなく、岩浅はいつも傍で見ているんです。
どこか乾いた関係なんだけれど、誰よりもしっかりと結ばれている…、だから "きょうだい" のほうが近いかな、と。

でも、そんな血も涙もないように見えるふたりの交わす会話が、とても優しい。
言葉は乱暴だけど、嘘がなくて、特に岩浅が高津のことを大事にしてるのがよくわかります。
高津の母親が入院したとき、高津は母の髪の毛を三つ編みしてやるんです。そして、死ね、とさえ思ったこともある母に 「可愛くなったで」 と声をかけてあげます。
さらに、お見舞いから帰るときに、母の手を握って 「またの(また来る)」 って。
いまどきの高校生の男の子で、母親の手を握って、嘘でもそんな優しい言葉をかけてあげられる子って何人くらいいると思いますか。
ね、ふたりはとっても優しいのです。

だけど、高津には敵が多すぎました。その敵は、どんどん増えて、集団で高津を狙うようになります。
用心などするはずもない高津が、あまりにもあっさりやられてしまったのには少し驚きました。バーで岩浅と交わした会話で、少しまいっていたのかな。ちょっと来い、と言われて、着いていってしまった高津には、もうなんと言ったらいいのか…

岩浅と高津のあいだにあるのは、果たして愛なんでしょうか。
最初、カラダの関係はなくてもいいのでは、と思いました。でも、岩浅と高津は、これ以上深く係われないというところまで、深く深く繋がらなければならないのかもしれません。
でないと、二十歳の誕生日も迎えられないまま、地獄へ落ちて行ってしまうような気がしませんか。
(★★★★+0.5)


この話を映像で見せられたら怖いだろうなぁ。
でも、読んでるぶんには、少年たちが可愛くて悲しいだけでした。
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