ボーイズラブの小説やマンガの感想です.★3つが「面白い」であとはプラスマイナスアルファかな.お気軽にどうぞ.

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

好きになってはいけない と思うこと自体、もう好きになっているのだと思います。




【こんな話】
親友・三田村の恋人を3週間預かることになった矢崎。
最初は乗り気でなかった矢崎だが、少年・啓の予想外の素直さや美しさに惹かれていくのを止めることはできなかった。
そして、啓もそれは同じで。

【ひとこと】
★「恋をしてはいけない」
この話がせつないのは、ふたりとも "この人を好きになってはいけない" と思うだけでなく、それをちゃんと守っているからだと思います。
どちらかが、 「いいじゃん、言わなきゃバレないよ」 なんて人間だったら、まだラクだったのかもしれません。

啓の表情や仕草にドキっとしたり、啓の言葉に心があったかくなったりするたびに "好きになってはいけない" と思い直し、 "大丈夫、まだ好きになったりしてない" と確認する矢崎。
矢崎が日を追って、啓に心を奪われていく様子が、悲しいほど丁寧に書かれています。

啓もまた、矢崎のことを好きになっていくのですが、矢崎視点で書かれた話ながら、啓の矢崎に対する気持ちの変化が、これまた痛々しいのです。
たいていは無意識、あるときは意識的に、行動や言葉尻に矢崎への気持ちを込めている啓がいじらしくてたまりません。
出会ったばかりの、それも3週間一緒に暮らすだけの人間に、恋人の三田村にも話していない本心を打ち明けるところがもう泣きそうでした。

私が好きなのが、矢崎と啓が車の中で、お互いの気持ちを知りながらも牽制しあっているところ。
まるで、導火線を火がじりじりと伝っていくかのようなこのシーン、なんて上手に書くんだろうと思いました。
お互いすごく好きで、やっと抱き合うことができたのに、ふたりがちっとも幸せそうじゃないのが嘘っぽくないというか、吉田さんぽいというか。
こんな結末で筆を置くのは、とても勇気の要ることではなかったでしょうか。


★「夜が明けていく」
本編の終わりで、三田村のところへ帰った啓は、程なく実家へ戻ることに。
これは、その2年後の話。

裕一 ("啓" というのは本名ではありませんでした) には、自分で自分を許せない過去がありました。
まず、父親から性的虐待を受けていた姉を救えなかったということ、
また、家を出て、カラダを売るような仕事をしていたということ、そのあいだに、母親を死なせてしまったこと…
そしていちばんに、三田村を裏切って矢崎を欲しがったこと。
そんな自分を許せないから、矢崎と幸せになるわけにはいかない、と。
結局、"好きになってはいけない" 状態の繰り返しなのです。

"懺悔すれば神様は許してくれるけれど、自分は後悔していないから懺悔できない"
と話す裕一ですが、最後の "矢崎を欲しがったこと" を除いては、じゅうぶん後悔していたはずです。
だったらそれだけでも 牧師に話を聞いてもらっていれば、少しは裕一の気持ちも和らいだのかなと思ったのですが、裕一にとってはこれらの出来事がすべて繋がって枷となっていたから、部分的に許してもらうこともできなかったんですね。

最後は、矢崎の押しで。
「これは強姦だから、気持ちよくなっても君が悪いんじゃない」 って。
このやり方はちょっと…
強姦という言葉を使うことで、俺も同罪だから… というつもりだったのでしょうが、下手をすれば 裕一に 「俺のために矢崎さんが罪を犯してしまった」 とより一層の重荷を背負わせてしまったかもしれません。
終わりよければ… ですけどね。

裕一はもう、逃げも隠れもしなかったでしょうから、もう少し待ってあげてもよかったのでは。
そんな小細工なしでも、矢崎の 好きだ好きだ愛してる! という言葉だけで、いつかは裕一も気持ちを切り替えることができたと思うのです。
矢崎が何度も裕一のところに通って、一生懸命説得して、晴れて結ばれるまでのじれったい過程を、吉田さんの文章で読みたかったです。
(★★★★☆)


読んでくださってありがとう


スポンサーサイト

『ダブル・ベッド』 の感想のときにもこう書いたような…。
いいお話でした。 


雨のように、愛のように
吉田 ナツ 著
ビブロス (2005.12)


【こんな話】
異動で地元へ帰った永井は、職場で 高校時代の同級生・菱谷と再会する。
菱谷は上司の宮内と付き合っていたが、菱谷の苦い恋愛体験を知る永井は、菱谷が 宮内のようにいい加減な男に翻弄されていることが面白くない。
そして、旧交をあたためるうちに、永井は菱谷に惹かれていくのだった。

【ひとこと】
高校時代の永井と菱谷は、特に交友関係はありませんでした。
しかし、永井の友人と菱谷がキスをしているところを目撃、それが原因で菱谷がひどいふられ方をしたこともあり、菱谷のことは永井の記憶に残っていたんですね。

永井には、勉強もスポーツもよくできる 校内の有名人だった菱谷が、家庭の事情で進学もせず、地味な職に就いていることも、またしても軽薄な男・宮内と付き合っていることも、すんなり受け入れることができませんでした。
あのときの、ふられても凛とした態度をとっていた菱谷のことを、特別な思い出として忘れられないでいるというのに、なんでまたあんな奴を好きになってるんだ!? という気持ちがあったんでしょう。

しかし、菱谷は飄々と

「俺が好きになるのって、いつもそういう男なんだよ。暴力夫から逃げない妻、みたいのかな?」

と笑っているもんだから、永井はますますイライラ。
"暴力夫から逃げない妻" って…、自らその例えはどうなんでしょうね。かなりウケました、このセリフ。

そして、ここではまだ、正義感からきていた永井のイライラが、だんだん嫉妬に変わっていくのです。

永井はあっさり告白してしまうのですが、意外だったのは、彼が無理に結果を急いだりしないところでした。
モテるわりには恋愛は下手くそな (私にはそう見える) 永井が、菱谷に関しては忍耐強くて、真っ直ぐなんですよね。
ああ、これがオビにあった 「一生に一度の純愛」 なのか! と実感しました。

結局、ふたりの仲は進展することなく、永井の赴任期間は終了、本社へ戻ることに。
しかし、菱谷が宮内のミスをかばって辞職したことを知り、永井はいてもたってもいられず菱谷のマンションの前まで来てしまいます。
ここの弱気な永井が好きです。部屋の前まで行ったところ、菱谷とはちあわせてしまってうろたえる永井が、すごく意外で可愛いです。

なかなか落ちなかった菱谷も、ここでやっと陥落。
この本は、「泣ける」 がウリみたいなんですが、私はここの菱谷が永井から借りっぱなしのシャツを着ていたことにちょっと泣きそうになりました。
永井のシャツを着ることが、不幸に慣れっこになった菱谷の、ちょっとした幸せなのかなぁと思って。

短編 「ナチュラルウォーター」 は、クリスマス直前のお話。
菱谷視点で書かれているのが、なんだかふたりの秘密を覗いているようでいい感じです。
甘々なんだけど、ベタベタでもエロエロでもない幸せ?なお話です。
この感じが、まさに吉田さんの持ち味です。
(★★★★☆)


宮内は、永井が思っているほどイヤな男ではないでしょうね。
永井をにらみつける宮内が、なんとなく好きでした。

癒されました。いいお話でした。


ダブル・ベッド
吉田 ナツ著
ビブロス (2005.4)
ISBN : 4835217268
価格 : \893



【こんな話】
ある日、設計事務所の営業を務める佐伯(攻)が、恋人の実里の部屋を訪れると、鍵が取り替えられていた。と同時に、もう会わないという内容のメールが届く。
実里は、新人の設計士。入社早々、付き合うことになったのだが、佐伯が今までに付き合ったことのないタイプのせいか、どうもうまくいかない。今回も、何か誤解が生じているらしいのだが…

+:+:+:+:+:+:+:+:+:+:+:+:+:+:+:+:+:+:+:+:+:+:+:+
ダブル・ベッド (佐伯視点)
アイム・ホーム (実里視点) の2編収録


【ひとこと】
ちょっと一晩…と思っただけなのに、佐伯はどっぷりと実里にハマってしまいます。女はもちろん、男にも慣れてる、百戦錬磨の佐伯が翻弄されてしまうわけですが、別に実里は「魔性の女」タイプではありません。それどころか、儚げな美青年で、佐伯の言うことはなんでも聞くし、自分から何かを要求したりしない、やまとなでしこといった雰囲気なのです。

本のタイトルにも関係してくるのですが、実里の部屋のベッドは小さくて、ふたりでは眠れません。だから、佐伯がベッドに寝て、実里はリビングのソファに寝るんです。それを読んで、さぞかし佐伯は不安だっただろうなぁって。それでなくても、朝起きたら消えていなくなっていそうなんですよ、実里って。なのに、別の部屋で眠るなんて。
なんだか、鶴の恩返しの鶴みたいじゃないですか、「決してリビングを覗かないでください」 みたいな…

それにしても、佐伯はなんて素敵なんでしょう。
なんでも自分の言いなりになる実里に、苛つきながらも、すっごく辛抱しています。それにね、言葉が優しいんです。いちばん最初、お酒の席で実里を誘うときに、
「じゃあさ、今日はちょっと遅くなろうか、一緒に」
って言うんですけど、このセリフがね?。特に、色っぽくもなんともないけど、好きなんです。

そして、ある出来事を機に、従順だった実里にも少し変化が訪れます。
でも、修羅場といってもいい展開なのに、優しい態度を変えない佐伯に私がもうメロメロでした(笑)

続編の「アイム・ホーム」も、穏やかでいいお話です。
実里は、小さい頃に両親を亡くし、叔父に育てられたのですが、その叔父との再会を交えながら、実里の過去に触れています。
子どもの頃、暖かい家庭に憧れていた実里は、いつも理想の間取りを書いて遊んでいたんだそうです。それで、大人になって設計士に。このエピソードがいいなと思いました。

(★★★★+0.5)

佐伯と実里のやりとりに和みました。
Copyright © 小夜すがら 其ノ壱. all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。