『王子様はポリバケツに乗って』 と同じ、桜花学園が舞台の作品です。
今度は、生徒じゃなくて先生だから 「王様」 なのね。
【こんな話】
沢渡は、桜花学園高等部の1年生。
入学早々ケガをして、まるまる一学期を休んでしまったため、友だちもいなければ、構内でも迷子になる始末。
ある晩、ちょっと散歩に出るつもりが、帰る方向がわからなくなってしまった沢渡は、沼に落ちそうになったところを、馬上の騎士に助けてもらう。
その騎士の正体は、生物教師の保科で、生徒からは 「沼の王」 として恐れられ、気味悪がられる存在だった。人を寄せつけない雰囲気の保科だったが、沢渡はそれが真の姿ではないことを知り…
【ひとこと】
夢乃先生、またこんな話… (笑)
一見バカバカしい設定 (失礼) でも、やっぱり面白くて読後感が爽やかなのが、このかたのいいところ。
今回も、いろいろと盛りだくさんで楽しかったです。
ストーリーに関しては、上記あらすじから "推して知るべし" なので、ここではいろいろと思ったことなど…。
まず、主人公の沢渡奈知くん。
この子、偉いなぁと思いました。ずっと休学していたせいで、なかなか友だちもできなくて、ちょっと落ちこんでいるんです。
でも、周りの生徒たちに遠巻きにされても、寮で同室の子に冷たくされても、すっごく前向きなんですよ。ゼッタイ他人を悪く言わないし。
見かけは、気弱ですぐいじけてしまいそうな感じなのに、芯はとっても強くて感心しました。
私自身、転校にあまりいい思い出がないせいか、そんな奈知が好きでした。
そして、その奈知に慰め、勇気づけられるのが、この話の攻め様 "ザ 沼の王" 保科先生です。
最後まで、年齢不詳 (笑) たぶん、フルネームも明かされていなかったのでは… (どこかに書いてあったらごめんなさい)
保科は、カッコいいくせに、突っ込みどころ満載の愛すべきキャラです。
むかし、付き合っていた男に裏切られたせいで、人間不信気味になっているんですが、だからって教師のくせにこんな無愛想なのって…
「俺の気持ちをわかってくれるのは、お前 (=馬) だけさ」 とばかり、夜ごと沼のほとりで物思いに耽ってたりするもんだから、生徒に 「人食い」 なんて噂されてしまいます… (いまの時代、普通いわれない)
でも、たった16歳の少年と出会ったことで、一気に浮上。
保科が奈知に、自分の思いを打ち明けるシーンを読んでいると、なんだかやたら恥ずかしいんです。どうしてこんなに気恥ずかしいのかと考えてみたら… この人のセリフ、まるで恋愛シミュレーションゲーム (乙女ゲー) キャラのラブラブエンディングの雰囲気なんです。
手の届かない、孤高の人といったイメージなのに、実はとっても繊細で乙女な人、保科です。
蛇足ですが、今までは受けだったと思いますよ。
立ち直ってからの保科の甘っぷりがまたすごいです。
終盤は、思わず 「あんた、先生だろう!?」 と突っ込むこと必至。
お楽しみに。
(★★★☆☆)
イジワルな野上先輩が気になったら、ぜひぜひ 『ポリバケツ』 を。
あと、「俺の気持ちをわかってくれるのは…」 のセリフはフィクション (捏造) です。
今度は、生徒じゃなくて先生だから 「王様」 なのね。
夢乃咲実 著
ビブロス (2005.8)
ISBN : 4835217489
価格 : \893
ビブロス (2005.8)
ISBN : 4835217489
価格 : \893
【こんな話】
沢渡は、桜花学園高等部の1年生。
入学早々ケガをして、まるまる一学期を休んでしまったため、友だちもいなければ、構内でも迷子になる始末。
ある晩、ちょっと散歩に出るつもりが、帰る方向がわからなくなってしまった沢渡は、沼に落ちそうになったところを、馬上の騎士に助けてもらう。
その騎士の正体は、生物教師の保科で、生徒からは 「沼の王」 として恐れられ、気味悪がられる存在だった。人を寄せつけない雰囲気の保科だったが、沢渡はそれが真の姿ではないことを知り…
【ひとこと】
夢乃先生、またこんな話… (笑)
一見バカバカしい設定 (失礼) でも、やっぱり面白くて読後感が爽やかなのが、このかたのいいところ。
今回も、いろいろと盛りだくさんで楽しかったです。
ストーリーに関しては、上記あらすじから "推して知るべし" なので、ここではいろいろと思ったことなど…。
まず、主人公の沢渡奈知くん。
この子、偉いなぁと思いました。ずっと休学していたせいで、なかなか友だちもできなくて、ちょっと落ちこんでいるんです。
でも、周りの生徒たちに遠巻きにされても、寮で同室の子に冷たくされても、すっごく前向きなんですよ。ゼッタイ他人を悪く言わないし。
見かけは、気弱ですぐいじけてしまいそうな感じなのに、芯はとっても強くて感心しました。
私自身、転校にあまりいい思い出がないせいか、そんな奈知が好きでした。
そして、その奈知に慰め、勇気づけられるのが、この話の攻め様 "ザ 沼の王" 保科先生です。
最後まで、年齢不詳 (笑) たぶん、フルネームも明かされていなかったのでは… (どこかに書いてあったらごめんなさい)
保科は、カッコいいくせに、突っ込みどころ満載の愛すべきキャラです。
むかし、付き合っていた男に裏切られたせいで、人間不信気味になっているんですが、だからって教師のくせにこんな無愛想なのって…
「俺の気持ちをわかってくれるのは、お前 (=馬) だけさ」 とばかり、夜ごと沼のほとりで物思いに耽ってたりするもんだから、生徒に 「人食い」 なんて噂されてしまいます… (いまの時代、普通いわれない)
でも、たった16歳の少年と出会ったことで、一気に浮上。
保科が奈知に、自分の思いを打ち明けるシーンを読んでいると、なんだかやたら恥ずかしいんです。どうしてこんなに気恥ずかしいのかと考えてみたら… この人のセリフ、まるで恋愛シミュレーションゲーム (乙女ゲー) キャラのラブラブエンディングの雰囲気なんです。
手の届かない、孤高の人といったイメージなのに、実はとっても繊細で乙女な人、保科です。
蛇足ですが、今までは受けだったと思いますよ。
立ち直ってからの保科の甘っぷりがまたすごいです。
終盤は、思わず 「あんた、先生だろう!?」 と突っ込むこと必至。
お楽しみに。
(★★★☆☆)
イジワルな野上先輩が気になったら、ぜひぜひ 『ポリバケツ』 を。
あと、「俺の気持ちをわかってくれるのは…」 のセリフはフィクション (捏造) です。
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私の、セリフ萌えNo.1作家さんです。
【こんな話】
智波(ちなみ・高1)は、北海道から東京に引っ越してきたばかり。
ある日、不安だらけの都会暮らしを思い悩み、ホームシックで泣いていたところに、優しそうな青年と出会う。彼は、智波のことを慰め、元気づけてくれるのだった。
さて、その後、智波は転入先の高校で、その青年と再会することに。でも、学校での彼は、外見も物腰もずいぶん違って別人のよう。
聞けば、椎葉(しいば・高3)というその青年は、選ばれた者だけが籍を置くことができる、「紳士クラブ」のメンバーらしいのだが…。
【ひとこと】
聞くからに危なそうな「紳士クラブ」も、夢乃先生が書いてるんなら、まあどうってことないだろう(よい意味で)と予想はしていました。そして、やっぱりその通りでした(笑)
学園の花形、紳士中の紳士が集うこのクラブの真の活動は、意外なことにずいぶん素朴なものだったのです。トップシークレットにもなっている、その真の使命とは…タイトルで想像ついちゃうかもしれないけど→(反転)畑しごとなのでした。
ね、至って学生らしい組織でしょ。
智波に親切にしてくれた青年・椎葉は、その紳士クラブで先頭切って野良仕事しちゃうような、ワイルドな男の子です。が、クラブ会員たるもの、みんなの前ではヘラヘラしているわけにはいかないので、当然、智波の前でも一応は紳士風に振る舞わないと。
でも、それが鉄仮面つけてる感じでも、二重人格な感じでもなくて、ちゃんと智波にも優しくしてくれる。これが、智波にとっても読者にとっても、非常に安心できるところです。
一方、智波は自然を愛する、可愛らしい男の子。唯月さんのイラストも手伝って、イメージとしては、中1くらい。だけど、妙に強いところがあります。
結局、告白も智波のほうからだったもんね。←この辺り、さすがの椎葉もちょっとタジタジで、面白い。
いろいろと障害は訪れるけれど、これっぽっちも揺さぶられることはありません。そう、ふたりとも強いのです。
さて、夢乃先生といえば、セリフ萌え!です。この方は、ストーリーもさることながら、セリフがとっても上手だと思います。
かならず、ゾクっとくるセリフを書いてくださいます。それが、脇キャラのセリフだったりするから、すごいのです。
今回、ゾクっとしたのは
「君がたぶん会いたがってる人に、会わせてあげるだけだから」
っていう、名もない生徒のセリフでした。
注目キャラとしては、智波のいとこ・さっちゃん(♂)。彼は、非常に小悪魔で、実にうっとうしいのですが、考えてることがミエミエで憎む気にもならない、そんな男の子です。弟に欲しいタイプ。
そのわがまま勝手ぶりに、椎葉はホントに腹を立てていたみたいだけど、さっちゃんのことを憎みきれないのは私だけではないようで、なかなか面白い展開になります。お楽しみに。
夢乃先生の作品って、一見よくある設定のようで、どっかハズれてるっていうか、バカバカしいというか…(よい意味で・笑)
でも、読むとすごく楽しい。学園ものがお好きな方は、先生の既刊本もぜひ。ヘンなのあります。ええ、だからよい意味で(笑)
(★★★★+0.5)
旧ブログのトラックバック
B-Life.SS
夢乃 咲実
ビブロス (2005.2)
ISBN : 4835217039
価格 : \893
ビブロス (2005.2)
ISBN : 4835217039
価格 : \893
【こんな話】
智波(ちなみ・高1)は、北海道から東京に引っ越してきたばかり。
ある日、不安だらけの都会暮らしを思い悩み、ホームシックで泣いていたところに、優しそうな青年と出会う。彼は、智波のことを慰め、元気づけてくれるのだった。
さて、その後、智波は転入先の高校で、その青年と再会することに。でも、学校での彼は、外見も物腰もずいぶん違って別人のよう。
聞けば、椎葉(しいば・高3)というその青年は、選ばれた者だけが籍を置くことができる、「紳士クラブ」のメンバーらしいのだが…。
【ひとこと】
聞くからに危なそうな「紳士クラブ」も、夢乃先生が書いてるんなら、まあどうってことないだろう(よい意味で)と予想はしていました。そして、やっぱりその通りでした(笑)
学園の花形、紳士中の紳士が集うこのクラブの真の活動は、意外なことにずいぶん素朴なものだったのです。トップシークレットにもなっている、その真の使命とは…タイトルで想像ついちゃうかもしれないけど→(反転)畑しごとなのでした。
ね、至って学生らしい組織でしょ。
智波に親切にしてくれた青年・椎葉は、その紳士クラブで先頭切って野良仕事しちゃうような、ワイルドな男の子です。が、クラブ会員たるもの、みんなの前ではヘラヘラしているわけにはいかないので、当然、智波の前でも一応は紳士風に振る舞わないと。
でも、それが鉄仮面つけてる感じでも、二重人格な感じでもなくて、ちゃんと智波にも優しくしてくれる。これが、智波にとっても読者にとっても、非常に安心できるところです。
一方、智波は自然を愛する、可愛らしい男の子。唯月さんのイラストも手伝って、イメージとしては、中1くらい。だけど、妙に強いところがあります。
結局、告白も智波のほうからだったもんね。←この辺り、さすがの椎葉もちょっとタジタジで、面白い。
いろいろと障害は訪れるけれど、これっぽっちも揺さぶられることはありません。そう、ふたりとも強いのです。
さて、夢乃先生といえば、セリフ萌え!です。この方は、ストーリーもさることながら、セリフがとっても上手だと思います。
かならず、ゾクっとくるセリフを書いてくださいます。それが、脇キャラのセリフだったりするから、すごいのです。
今回、ゾクっとしたのは
「君がたぶん会いたがってる人に、会わせてあげるだけだから」
っていう、名もない生徒のセリフでした。
注目キャラとしては、智波のいとこ・さっちゃん(♂)。彼は、非常に小悪魔で、実にうっとうしいのですが、考えてることがミエミエで憎む気にもならない、そんな男の子です。弟に欲しいタイプ。
そのわがまま勝手ぶりに、椎葉はホントに腹を立てていたみたいだけど、さっちゃんのことを憎みきれないのは私だけではないようで、なかなか面白い展開になります。お楽しみに。
夢乃先生の作品って、一見よくある設定のようで、どっかハズれてるっていうか、バカバカしいというか…(よい意味で・笑)
でも、読むとすごく楽しい。学園ものがお好きな方は、先生の既刊本もぜひ。ヘンなのあります。ええ、だからよい意味で(笑)
(★★★★+0.5)
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読んでいて、思わず笑いがこぼれてしまう本でした。
【こんな話】
ある日、突然上司に呼ばれた池森加津樹(かずき)。ついにリストラかと思いきや、え、本社へ出向?
半信半疑で本社を訪ねた加津樹を待っていたのは、なんと本社の経営を握る財閥の御曹司と偽装駆け落ちをしろ、という業務命令で…。
【ひとこと】
ありえない話…でもないのかな。御曹司には、決まった婚約者がいたのだけど、その結婚には権力がらみでいろいろな問題があるらしい。そこで、なんとか先方から断ってもらおうという作戦です。
この御曹司(匡史・まさふみ)が、不思議なテンポなんですよ。世間知らずでのほほんとしてるんだけど、妙に肝が座っているというか、チャンレンジ精神旺盛というか。「駆け落ちごっこ」をしていればよかったはずなのに、だんだん本当の駆け落ちみたいになっていく過程でも、ひたすらのほほん。真のお坊ちゃまというのは、こんな感じなのかも…。
加津樹は素直な青年だから、そんな御曹司の行動ぶりに、いちいち驚いたり困ったりしてて。これがまた面白い(そして可愛い)。
でも、いくら本当の駆け落ちのようでも、これは業務命令。終わりのときはやってきます。ここまでがあまりにも、ぽよよんとしたストーリーなので、後半の展開には少々胸が痛みます。でも、その先には、壮大な(壮大すぎる)エンディングが待っています。
(さらにネタバレ)
加津樹は幸せ者です。ちょっとうらやましい。よっ、玉の輿!
財力にものをいわせた…ことになるのかもしれないけれど、御曹司はとっても真剣に加津樹とふたりで幸せになる方法を見つけてくれます。でも彼が真剣になればなるほど、なんだか笑いがこみ上げてくるんですよね。やっぱりお坊っちゃまはお坊っちゃまなのです。
ちょっと古いけど 「スプーン一杯の幸せ」 そんな感じのお話です。いい人がたくさん出てきます。
(★★★★+0.5)
仕立てのよいスーツを着て、ビラ配りやサンドイッチマンをするとは大物です。初めてのキスに至る経緯も大笑いでした。
【こんな話】
ある日、突然上司に呼ばれた池森加津樹(かずき)。ついにリストラかと思いきや、え、本社へ出向?
半信半疑で本社を訪ねた加津樹を待っていたのは、なんと本社の経営を握る財閥の御曹司と偽装駆け落ちをしろ、という業務命令で…。
【ひとこと】
ありえない話…でもないのかな。御曹司には、決まった婚約者がいたのだけど、その結婚には権力がらみでいろいろな問題があるらしい。そこで、なんとか先方から断ってもらおうという作戦です。
この御曹司(匡史・まさふみ)が、不思議なテンポなんですよ。世間知らずでのほほんとしてるんだけど、妙に肝が座っているというか、チャンレンジ精神旺盛というか。「駆け落ちごっこ」をしていればよかったはずなのに、だんだん本当の駆け落ちみたいになっていく過程でも、ひたすらのほほん。真のお坊ちゃまというのは、こんな感じなのかも…。
加津樹は素直な青年だから、そんな御曹司の行動ぶりに、いちいち驚いたり困ったりしてて。これがまた面白い(そして可愛い)。
でも、いくら本当の駆け落ちのようでも、これは業務命令。終わりのときはやってきます。ここまでがあまりにも、ぽよよんとしたストーリーなので、後半の展開には少々胸が痛みます。でも、その先には、壮大な(壮大すぎる)エンディングが待っています。
(さらにネタバレ)
加津樹は幸せ者です。ちょっとうらやましい。よっ、玉の輿!
財力にものをいわせた…ことになるのかもしれないけれど、御曹司はとっても真剣に加津樹とふたりで幸せになる方法を見つけてくれます。でも彼が真剣になればなるほど、なんだか笑いがこみ上げてくるんですよね。やっぱりお坊っちゃまはお坊っちゃまなのです。
ちょっと古いけど 「スプーン一杯の幸せ」 そんな感じのお話です。いい人がたくさん出てきます。
(★★★★+0.5)
仕立てのよいスーツを着て、ビラ配りやサンドイッチマンをするとは大物です。初めてのキスに至る経緯も大笑いでした。
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