ボーイズラブの小説やマンガの感想です.★3つが「面白い」であとはプラスマイナスアルファかな.お気軽にどうぞ.

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よそのブログで、この本がなかなか手に入らなくてオークションなどでも価格が高騰している、という記事を読みました。
ひょっとして、近所の古本屋さんにあったりしないかしら、と出かけてみたら、あっさり300円でゲット。
需要と供給は、ままならないものなんですね。


遥山の恋
六青 みつみ著


【こんな話】
身体に醜い痣をもつ少年・紫乃 (しの) は、老犬シロと狩りの最中に、傷ついた戦装束の青年・貴哉 (たかちか) を救う。
人と交流をもたず、山でひとり暮らしていた紫乃にとって、誰かが近くにいることが何よりも嬉しかった。
夢でうなされ苦しむ青年を、必死に看病する紫乃。しかし、目覚めた青年は、紫乃の顔の痣を見て 「化け物」 と罵る。
青年の残酷な言葉に傷ついた紫乃は、それでも献身的につくすのだったが…

【ひとこと】
紫乃の痣は、祖先の呪いによるもの。
そして、身内の裏切りで、山へ追われることになった貴哉。
ふたりの境遇は、似ているといえば似ているのです。

しかし、紫乃が誰を恨むでもなく、自分の運命を静かに受け入れているのに対し、貴哉の胸の中は、自分を裏切った者への復讐心でいっぱい。
そんな貴哉を見て、心のきれいな紫乃は、とても居心地悪そうにします。

貴哉が復讐のために、山を下りてしまうのでは、という不安があったことも確かでしょうが、山で穏やかに暮らしてきた紫乃にとって、人間がこのように人を憎んだり罵ったりするのを見るのは耐えられなかったのだと思います。
紫乃が、一生懸命 貴哉をなだめようとするシーンが好きです。

そして、貴哉は "あてのない復讐の時期を待ちながら くすぶった恨みを抱えて生きるより、穏やかで平安な未来という選択肢もある" と気づき、紫乃に
「ずっと ここで生きていこうと思う」
と告げます。

このとき貴哉は、どのくらいの覚悟をして、紫乃にそう告げたんでしょうか。私は、6割くらいの覚悟しかなかったのかなと思うんですよ。
だから、"案の定" 貴哉が山を降りることになったときの 「必ず迎えに来る」 という約束も、なんだかとってつけたような気がして、悲しかったんですけど。
(でもこれはたぶん、私のまちがった解釈だと思います)

                     ■□■□■

その後3年間、紫乃は貴哉を待ち続けることになりました。
最初は、貴哉との再会を楽しみに待っていた紫乃でしたが、しだいに不安を感じるようになり、そしてそれが、裏切られたことへの憎しみに変わり、紫乃はずいぶん変わってしまいます。
人間は、環境や気持ちのもちようによって、醜くも清らかにもなるんだなぁと、つくづく考えさせられました。

しかし、3年ものあいだ、貴哉のほうから、手紙でも遣いでも、なんらかのかたちで紫乃に連絡をとることはできなかったんでしょうか。
貴哉の身分なら、なんとでもなったのではと思います。それとも、その身分ゆえにできなかったのか。
じゃあ、もしその痣を治してくれるというお坊さんに出会わなくても、ちゃんと迎えに来てくれたの? と問いただしたくなってしまいます。

                     ■□■□■

紫乃が里に下りてからの話は、紫乃には悪いけれど、ちょっとお笑いです。
貴哉のやきもちがひどすぎて、紫乃は山にいたときよりもさらに孤独になってしまったのですから…(笑)
あれでは、里の暮らしに慣れろというのが無理な話です。

まぁ、そのほかにも、いろいろと厄介ごとが起こり、紫乃はふたたび山へ戻ります。
貴哉に 「迎えに来て」 とはお願いしたものの、紫乃はほとんど諦めていたのではないでしょうか。
そして、それは貴哉も同じことで。

でも、ハッピーエンドです。
私は、ちょっとありえないかなと思いましたが、この終わりかた以外は許せないのも事実 (笑)
でも、お坊ちゃまな貴哉だから、これもアリかな。
(★★★☆☆)


復讐に息巻く貴哉に、紫乃が
「許すことは無理でも、せめて…忘れることはできない?」
と語りかけるシーンがあります。
でも、これって逆かなと思いました。

本当は、「忘れること」 のほうが、難しいんじゃないでしょうか。
あいつのことは許した、あのことは水に流した、と口に出したり、頭で考えたりするのは、心のどこかでまだわだかまっている証拠なのかなぁと。
本当に誰か (何か) を許すということは、すべてを忘れて、もう二度と思い出さないことなのかもしれませんよね。

長いのにありがとう

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