ボーイズラブの小説やマンガの感想です.★3つが「面白い」であとはプラスマイナスアルファかな.お気軽にどうぞ.

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3人とも、女性にはモテなさそうです。




【こんな話】
菱田が、部下 そして親友でもある牧野に思いを寄せて6年。
一生告白する気はなかったものの、その牧野と同居のチャンスが!
しかし、引っ越し当日、牧野の弟・悦巳から 「おれもここに置いてくれ」 と頼まれて…

【ひとこと】
菱田、牧野、それに牧野の弟の悦巳。

主人公の菱田は、29歳にして課長、社内一の出世頭らしいです。
自他ともに認める 「クールな菱田課長」。
でも、この本には、菱田の外見を褒める描写が出てこないので、クール+メガネなのに、たぶんカッコよくはないんだと思います。
真面目で融通が利かなくて、神経質で、だけど心は乙女、そんな人。

この菱田が、6年越しで片想いしているのが牧野。
見るからに頼りなさそうで、社内結婚したものの、半年で離婚されてしまったお気の毒な人です。
路頭に迷っていたところを、菱田に拾われて一緒に暮らすことになります。

菱田ってば、用意周到なんですよ。
離婚した牧野がひとり暮らしを始めることを見越して、あらかじめ広い部屋へ引っ越したりして。
家賃だって高いのに、牧野には 「気にしなくていい」 なんて言ってる。
本人曰く、頼ってほしいんだそうです。いじらしいような、気色悪いような…

でも、 俺が養ってやる… みたいなことを考えていても、中身はいささか自虐的な恋する乙女なわけです。
一生告白する気がなければ考える必要もなかったのかもしれませんが、どうするつもりだったんでしょうね。何がって、ほら。
だって菱田も牧野もどう考えたって 「受け」 だもの。

というか、それ以前に、菱田は牧野のいったいどこがよくて好きになったのか、そこからして理解しがたいものがあったんですけどね。


さて、そこへ転がり込んで来たのが、牧野の弟・悦巳です。
アパートを追い出された、とか言ってますが、実は最初っから菱田狙い。
菱田と自分の兄がふたきりで暮らすなんて許せない! というのが本音。
表紙でもわかるように (左) 派手でおしゃべりでちゃらんぽらんな感じ (本当はしっかり者) の、菱田とは正反対のタイプです。

せっかく牧野と一緒に暮らせると喜んでいた菱田は大パニック(傍目には冷静)
あからさまに嫌がっている様子が面白いです。
途中、悦巳が何度も 「そんなに兄貴が好きなのか」 と聞くシーンが出てきます。これ、イコール私の気持ち。
牧野になんの魅力も見出せない私は、悦巳のほうがいいじゃんか! とイライラ。
でも、菱田の気持ちになってみれば、いきなり悦巳みたいな男、虫ずが走るくらいイヤだったのかも。きっとそうね。


さて。
こういうシチュエーションだと、菱田がだんだん悦巳にほだされていって… という展開が予想されます。
でも、この話はちょっと違う。

悦巳がご飯を作ってあげても、看病してあげても、告白しても、菱田はなびいていかないんです。
いや、本当はなびいてるのかもしれないんだけど、本人が自覚していないうえに、いちいち 「俺の好きなのは牧野だ」 って口に出すもんだから、ほとんど進展しません。

相変わらず 牧野は牧野で、本当に情けないというか、ふがいないというか、どうしようもないというか、まるっきしダメなのに、それでも菱田が好きだっていうならしかたないです。
でも、その牧野が、別れた奥さんを追ってアメリカに行ってしまったあたりで、やっと菱田の中で何かが変わりました。
それはまぎれもなく、悦巳効果で。


実は菱田は、両親 そして兄との間に、確執がありました。
ある意味、泣き寝入り&逃避状態だった菱田が、それを断ちきるために悦巳を連れて里帰りします。
これも、悦巳効果。明るくて自分の思う道を歩んでいる悦巳に勇気をもらったんだと思います。
笑えるのは、菱田の兄も、悦巳マジックでいきなり人が変わっちゃったところ。
人間、腹を割って話してみないとわからないものです。それには、まず自分から歩み寄らなければ。


この話、いつのまにか、菱田が悦巳を好きになっているところが自然で好きです。
菱田も悦巳も無理してないから、きっと長続きするね。

でもって… なんの疑問ももたないまま、受けな菱田はどうなんだろう。
牧野と万が一付き合うことになってたら、どうするつもりでいたんだろう。
最後まで気になる私でした。
(★★★☆☆)


仕事で倒れた菱田の看病をしながら、枕元で悦巳が告白するんですよ。
悦巳のセリフはそりゃいい感じなのに、菱田はムードのかけらもなくて 「頭は大丈夫か」 なんて言ってます。
でも菱田も、本当は心の中で、嬉しいって感じてる。ここが好き。

読んでくださってありがとう

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執事萌えはないのですが、カバー裏のあらすじが気に入って即買い。


執事の特権
榎田 尤利著 / 佐々木 久美子イラスト
大洋図書 (2006.1)


【こんな話】
乃木坂製薬の営業職を希望していた 原田仁 (しのぶ) は、最終面接の末、どういうわけか 経営企画本部別室・室長付き特別秘書 として採用されることになった。
室長の乃木坂乙矢は、ひどい潔癖性に加えて、毒舌家で気分屋、ひとりよがりで神経質。そんないいことなしの上司の身の回りの世話が仁の仕事だという。しかも、住み込み…?

【ひとこと】(ストーリーの肝の部分は伏せました)
「私に触れたら殺す」
仁は初対面で、乙矢にこう言われます。
BLでは、たまに見かける接触恐怖症という設定。でも、乙矢は桁違いです。

半径1メートル以内には近づかない、何かを手渡すときは一度机の上に置く、常に手袋を着用すること etc. 乙矢に関しては、いろんな掟があるのですが、そんな掟より何より、乙矢本人に問題がありすぎです。
"手袋を嵌めた手で、シッシッと犬でも追い払うかのようにしてやった。もちろんわざとだ"
27歳にもなって、こんな具合なんですから。
乃木坂家の執事・富益さんが、今までに面接した人の数が 100人以上というのもうなづけます。

でも、乙矢は単に冷血というわけではないんですね。
子どもの頃、母から浴びせられた 「汚い」 という言葉を真に受けて、成人した今もそれを引きずっている可哀想な人間なのです。
普通だったら、年を経るごとに心も成長していくのだけれど、なんせ乙矢は他人と接触するのを避けまくってきたため、視野が恐ろしく狭いのだと思います。
だから、どんなに勉強して頭がよくなっても、心は子どものときのままだったのかもしれません。

でも、仁はカラダも心も大きい男でした。
最初こそ、腹を立てたりもしましたが、すぐに乙矢の本質を見抜き、文字どおりカラダを張って乙矢のために尽くします。
仁をイビり、鉄仮面を崩すことのなかった乙矢が、だんだんポロっと本音をこぼすようになっていく… その過程がいいです。

たとえば…
乙矢の接触恐怖症を少しでも和らげようという意図ではじめたチェス、乙矢は仁とのチェスタイムが楽しくてしかたないんです。
もう誰が見てもそんなのバレバレなのに、「楽しかった」とか「ありがとう」とかは口が裂けても言えないので、代わりに「お前は下手すぎるから早くうまくなれ」 って言うの。
つまり、またやろうってことが言いたいのよね。もうかわいい?ひゅ?

そして、ある大事件の後、ふたりのハートは急接近 (←自分で書いてて恥ずかしい) するわけですが、乙矢ってば童話に出てくるわがままなお姫様みたいに豹変してます。仁も、真剣なのか調子に乗ってるのか、すっかり王子様だし…。
これは笑うところなのか、それとも感動するところなのか、榎田さんの淡々とした文章が、私には謎でした (笑)

二人の初エッチはひたすらおかしいです。
私は、まだ寝るのは無理だろうと思ったんですが、意外にも乙矢が乗り気でした。
タイトルの 「執事の特権」 も、仁のほうが要求するのかと思ったのに… (以下省略)

まったく触れていませんが、ビジネスの話も出てきます。というか、もしかしたら、それがメイン?(笑)
でも私には、上品なコメディ小説のように思えました。
(★★★☆☆)


表紙の乙矢は普通ですが、仁と初対面のときの格好はまるで貴公子。
そのイラストと 「純白の手袋は、乙矢の命綱だ」 という文章がおかしくて、電車の中で笑いが止まりませんでした。

読んでくださってありがとう


私、「このお話は、一応○○の続きということになっていますが、前作を読んでなくても大丈夫です」 っていうの、キライなんです。そう書いてあるのに限って、今までのことが気になってイライラしたりするから。こんなことなら、最初からシリーズだって言ってよ… って、いつも思うのです。
このお話も 『ゆっくり走ろう』 にほんのりリンク。でも、ホントにさりげないリンク。
これだったら、カンちゃんや "もえぎ" のこと知らなくても気にならないよね。

ま、とりあえず、恐るべし、藤井沢商店街 (笑)


歯科医の憂鬱
榎田 尤利著
徳間書店 (2005.8)
ISBN : 4199003606
価格 : \570


【こんな話】
マスクの下の怜悧な美貌に、キツい口調。大の歯医者嫌いの新城穂高 (ほだか) は、担当医師の三和 (みわ) が怖かった。でも、白衣を脱いだ三和は、穂高の知らない別人に!
笑顔を絶やさず、何をされても怒らないなんて、二重人格ってやつ!?
医院の内と外で激変する性格の、どっちが本当の顔なのか、次第に三和から目が離せなくなる穂高だけど!? (カバー裏より)

【ひとこと】
ふふ、カバー裏のあらすじがおもしろかったので、そのまま引っぱらせてもらいました。
"白衣を脱いだ三和は、穂高の知らない別人に" っていうところが笑える。

それにしても、本当に別人でした。
歯科医バージョンの三和も、怖くてイヤだけど、私服のときの 覇気の感じられない三和もなんだかなぁ…。
患者さんには、あんなに厳しくなれるのに、治療を離れると、とたんに自分にも他人にもゆるい人間になってしまうんですよね。
そうならざるを得ない過去があったとはいえ、30歳の大人がこれでは、あまりに痛々しすぎました。

でも、同一人物だって、まったく気がつかなかった穂高もどうなんでしょ。
穂高、いいキャラですねぇ。少女マンガでも、BLマンガでも、こういうキャラは美少女やおじょうさまに弱いのです。コロっといっちゃう。

三和が、友人につきまとわれたり、元カレに狙われたりするたびに、すっごい頑張っちゃってる穂高がかわいくてたまりません。三和も、穂高のこと頼りにする反面、かわいいなぁって思ってたんじゃないかしら。
だって最後に

「頭から食べたくなっちゃうくらい 好きなんです」

って。
へぇ、そんなふうに好きだったんだ?って、私のほうが嬉しくなっちゃいました。
三和は、根っから 「受け身」 って感じなんだけど、穂高のこと、やっぱり年上の視点から見守りたいのかなぁって、ちょっと思いました。

「歯科医の憂鬱」 は、穂高視点。 「歯科医の秘密」 は、三和視点。
このふたつの作品の雰囲気が、ガラっと違うのはさすがです。
「憂鬱」 では、ガンガン攻めてくぜ! の穂高と、やや押され気味の三和。
「秘密」 では、くよくよと悩む三和と、それが伝染ったわけでもないだろうけど、ガラにもなくマジな穂高。
ふたりの黒いとこ白いとこ、ぜんぶ見ることができた気分です。

で。
三和の真の姿は…?
やはり、東郷に、エキスカ (歯をほじくる道具) をつきたてたときの おっかない三和でしょうか。
だったらいいな。
(★★★★☆)


好きなセリフ。
コトの最中、三和が穂高に 「"先生" って呼ばないで」 と頼んだのに対し、穂高が

「なんで。 いいじゃん、なんかいやらしくてさ」

これが最高でした。
穂高にちょっと親近感…

素敵な脇キャラに出会えました。

largo
榎田 尤利 / 榎田 尤利〔著〕
笠倉出版社 (2004.2)
ISBN : 4773002735
価格 : \900




【こんな話】
音大でピアノを専攻している設楽六実(むつみ)は、桜田凛が大嫌い。大嫌いなんだけど、その演奏から目も耳も背けることができない。ある日、家にピアノを弾きに来ないかと誘うと、六実のことを好きらしい凛は、ピアノを弾く代わりにキスを要求してきて…。

【ひとこと】
六実が凛を嫌いな理由は、ズバリ「自分よりもピアノの才能があるから」。だったら、かかわらなければいいのに、無視してればいいのに、聴かずにはいられない、凛がどれだけの技量をもっているのか知らずにはいられない。この気持ち、よくわかります。私も楽器をやっていましたが、この人にはとてもかなわないなぁと思う人の演奏は、根本的に聴きたくなかったです。でも、聴かないと、もっと実力に差がついてしまうような気がして、聴かざるをえない。そんな経験がありました。スポーツや勉強など、人によってジャンルは違っても、他人の能力を認めたくないという感情は誰にでもあるんだと思います。

ピアノ弾く代わりに、キスさせて。おそらく凛は、ふざけて言ってみたんじゃないかしら。六実にイヤ!って断られたら、それはそれでまた「タラちゃんはホンマにウブやなぁ」くらいの話で(笑) その程度に考えてたと思うんです。だけど、六実は全くそんな余裕ナシなので、OKしちゃった。普通しないでしょ。
それに、ちょこっとキスするだけかと思ったら、結構しっかりやらせてあげてるんだもの。ちょっとびっくり。
結局この頃から、心の奥底で六実は凛が好きだったんですよね。キライキライもスキのうち…っていうのとは違うのかな? キスくらい(?)で繋ぎとめておけるんだったらガマンしよう…ていうほうが近いかな。いずれにせよ、この時点で、もう六実は凛にがんじがらめになってたのかも。

前原(まえばる)との一件もあったりして、六実も凛の存在の大きさに気づき、愛の告白もするわけですが、凛のピアノに関してはまだまだ吹っ切れてないのでは?
きっと、折あるごとに、凛の演奏にノックアウトされることでしょう。また落ち込むこともあるだろうけど、どうぞ二人で影響しあって、お互いを高めていってください。

ところで私、前原がとても好きです。スマートで色っぽくて、少し悪くて、当て馬志願で(笑) 3人の中では、いちばん綺麗なピアノを弾きそうです。傷ついただろうに、そんな素振りも見せないで、六実のこと諦めたふりしてるけど、またちょっかい出してくるかもしません。ちょっと応援してあげたくなりませんか。
この3人って、タイプは全然違うけど、どこか孤独なところがあるでしょ。だから、これからも仲よくつるんでいってほしいです。六実も、ちょっとはサバけて、ときどき前原とキスくらいしてあげればいいのに。…って、私は何を書いてるんだか。
(★★★★☆)

秋月さんのサイト "月と凌霄花" で、榎田尤利先生の作品についてのレビューを読ませていただいたのがきっかけで、ここ2週間くらいのうちに、もう7冊も買ってしまいました。今日は、その中の一冊。イラストが、紺野けい子さんです。


放蕩長屋の猫
放蕩長屋の猫
posted with 簡単リンクくん at 2005. 5. 1
榎田 尤利
大洋図書 (2001.12)
ISBN : 481300878X
価格 : \903



【こんな話】
まひろと遊真(ゆうま・年下)は、つきあって三年半の恋人同士、下町の "放蕩長屋" で暮らしていた。浮気癖のある遊真は、ここ最近遊んでばかりいて、まひろはなんとなくそれを許していた。
でも、まひろの我慢にも限界があって…

【ひとこと】
つかみが弱い というか、とっかかりがない というか、話に入り込むまで少し時間がかかりました。
ストーリーが、二人がぎくしゃくし始めたところから始まっているからなのか、落ち着かないんですよ。

まひろは29歳、遊真は27歳。
年下とはいっても、27歳のいい大人が、わがまま放題やってるのにかなり腹が立ちました。かと思えば、まひろは自分の感情を抑えこんでまで、そのわがままを許してやってる…。

遊真は、浮気したってまひろにはバレないだろう、バレても許してくれるだろう、程度にしか考えてないんです。でも、だからといって、まひろのことを軽んじたり、甘く見たりしてるわけでもない。
あくまでも、いちばん大切な人は、まひろで、浮気はただの遊び。悪気がないから、よけいダメだと思いました。バカなんです。

私自身、まひろを少し甘くみていたので、ついにキレはじめたときの彼の冷たさにはちょっとびっくり。興奮して遊真を責め立ててるわりには、冷静なところもあって、意外でしたね。怒らせたらめんどくさいタイプです。

普通はこのあたりで、優しくて頼りになる友人が出てきて、二人の中を取り持ってくれたりするんだけど、この話は脇キャラが一癖も二癖もあって、やきもきします。
まひろのことが好きな幼なじみの春彦も、昔まひろのことを好きだったやっぱり幼なじみの千鳥(女)も、手放しで二人を応援してくれるわけじゃないし、まひろを勘当中のお父さんも頑なだし。
おまけに、遊真の浮気相手(女)まで、ヘンに絡んでくるし。

結局、ふたりのが元通りになったのは、遊真なりに一生懸命努力したおかげかな。
ま、自業自得ではあるけれどね。

ラストで。
まひろが、これからの二人について、永遠の恋について考えるシーンがあります。
永遠なんてありえないと思いながら、「永遠に、お前だけだよ」と言葉にしたあと、

"変わらない思いなどない。けれども変わっていく可能性に気を取られて、今この瞬間の大切なものを失うのは、間違いなく愚かなことなのだ。"

って、まひろは考えるんです。これ、深い。
実は、この話はそんなに好きじゃないです。だけど、ここはすごく心に響きました。
(★★★☆☆)

「普通」って辞書引いてみたら、
"ひろく一般に通じること(広辞苑)" とありました。
わぁ、曖昧。じゃあ、「一般」て何よ、って言いたくなります。
たとえば、以前は私、自己紹介に「普通の主婦です」って書いてました。
普通の主婦って? 家事をして、奥さま友だちとおしゃべりして、それで?
だとしたら、家事もさぼりがちで近所にママ友だちもいない私は、ぜんぜん普通じゃないじゃないかもしれない…、なのに、自ら「普通」と書いてしまう。不思議。



普通の男(ひと)
榎田 尤利
光風社出版 (2003.11)
ISBN : 4415088589
価格 : \500



【こんな話】
夜のコンビニで、花島光也(はなしまみつや)と的場宗憲(まとばむねのり)は出会った。ふたり同時に、赤飯おにぎりに手を伸ばしたところを、的場が譲ってくれたのだった。
そんな二人が再会したのは、なんと花島が再就職した出版社。
厳しく、親身に指導してくれる的場に、花島は信頼を寄せていくが、その気持ちがいつしか「普通でない」ものに変わっていくのだった。それは的場のほうも同じで。「普通」という言葉に翻弄されるふたりの行く先は…

【ひとこと】
興味深かったのは、榎田さんの主語の使いわけ。
三人称で進められるお話だけど、章ごとに視点が変わります。
的場に視点が寄っているときは、主語は、宗憲と花島。
反対に、花島に視点が寄っているときは、光也と的場。
ファーストネームのほうの気持ちを軸にして、書かれているんです。
なんでもないことなのかもしれないけど、私には新鮮でした。

言葉を大切にする作家さんだから、好きな言い回しはたくさんあるけれど、ふたりがコンビニで出会ったときに花島が的場の顔を見て、「目もとの笑い皺は若い頃からあるような気がした」っていう表現、
これが好きです。そういえば、初対面の相手の歳を予想するときに、そんなふうに思うよなぁ?って。

このふたり、お互いを大事に想いはじめたのは、たぶん同じ頃だと思うんです。
そして、それを最初に表に出したのが、花島。ここで、花島は泣いてしまうんですが、そこで抱きしめたいと思う本能を押し隠す的場に、不満半分、安堵半分。
でも、それでいいんです。さんざん「普通」にこだわってきた的場が、ホイホイと花島と抱き合ってしまっては、私の気持ちがおさまらないですから(笑)

この時点で、ふたりは両想いなわけです。でも、それを知ってるのは、的場だけ。
花島は、一生この想いをひた隠しにしていくつもりなのだから、今度は的場が一歩踏み出すしかない!
最後、的場が「本能 vs."普通"の概念」のバトルに打ち勝って、花島に歩み寄る数ページは読ませます、手に力が入ります。

結末は、わりと中途半端です?。こんな終わりかたをされると、いつもはかならず続きを読みたくなるものだけど、的場と花島のその後を知りたいかと聞かれると、実はそうでもないです。
たぶんそれは、「普通」から抜け出して試行錯誤しながら進んでいくふたりのことを、そっとしておいてあげたいからかもしれません。
(★★★★+0.5)

でもって結局、的場はコーちゃんにいろいろ教えてもらったのかなぁ(笑)


旧ブログのトラックバック3件
B-Life.SS
maybe*love
shite blog

どこを見ても評判がよかったので、安心して読みました。
で、やっぱり楽しかった、ほのぼのしました。


ゆっくり走ろう
榎田 尤利
徳間書店 (2004.8)
ISBN : 4199003169
価格 : \560



【こんな話】
里見廣之(さとみひろゆき)は自動車メーカーのエリート社員。
営業指導のために、小さな営業所へ赴任することになった。が、バカ真面目な里見は、人付き合いの加減を知らず、衝突するわ無視されるわで、周囲から浮いてしまう。そんな里見に、あたたかく親身に接してくれる男がいた。
それが、営業成績断トツトップのカンちゃん こと 立浪寛一(たつなみかんいち)だった。

【ひとこと】
八百屋さんを手伝うカンちゃんのイラストが好きです。
表紙もいいけど、p.11のカンちゃんがとても。

さて、里見は本当に真面目で、バカていねいな様子には笑わせてもらいました。
そんな里見が、ほとんど抵抗なくカンちゃんを受け入れたのにもびっくりしました。でも、抵抗なんかしてる暇がないほど、厳しい状況に追い込まれていたんだものね。辛い思いをしてる里見を、やさしく(厳しく)ささえるカンちゃんがまた、すごく素敵なんですよ。
書き下ろしの「これは大人の恋だから」は、BLにはある意味お決まりの"意地を張ってすれ違う"パターンです。苦手なんだ、私こういうの。
カンちゃんを信じて頑張って読んだけど、落ち込むふたり(特にカンちゃん)が痛々しくて、もうどうかなりそうでした(笑)
羽賀という、本当にここまで当て馬らしい当て馬は珍しいという感じの男が出てきますが、わりといい男だと思いますよ。里見は、羽賀と付き合ってもうまくいったんじゃないかな(^^)うん。
(★★★★☆)

あ、ひとつだけ。
オビに「車という名の密室で 大人の恋は暴走する」ってあるんだけど、暴走なんて!
なんともジェントルな素敵な恋のお話です。


旧ブログのトラックバック2件
月と凌霄花
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